I love you,dear Ayato.

I love you always.

◆no title 

夢の中の出来事じゃないって
いい加減分かった

夢だと思ってたのに

こんな私でも
流石に現実に起きてることだって
今日はっきり気付いた

夢だと思いたかった、


一ヶ月くらい前から

数日に一度
一週間に一度の不定期な間隔で
真夜中なのに

個室の私の病室に

ナースコールも呼んでない
誰も来ない筈なのに

入ってくる靴音
病室の内側から鍵を掛ける音



麻酔の類かな

注射の針の感覚
微かに腕に感じた後

意識はぼんやりあるのに

感覚なんてしっかりあるのに

動かせなくなるの体少しも





理央兄さん、


どうしてこんなことするの


胸が痛い、

心がいたいよ


やめて欲しい、



ネクタイで両手を縛られて
パジャマのワンピースのボタンが
どんどん開かれて

熱い唇や舌、
冷たい手が体中を這っていく

体の内側に
指が入ってくる感覚が怖くて

怖いのに嫌なのにやめて欲しいのに

いやなのに
体が勝手に震えて溢れて

浅ましくも
もどかしいとさえ感じてしまうほど長い時間の後

体の奥、
裂かれるような圧迫感

私の体の中に
理央兄さんが入ってくる

やめてって
こんな事しないでって

お願い許して
いきたくないって泣いて頼んでも



理央兄さん
許してくれない




目が少しも笑っていない微笑みで


今日はやけに抵抗するね

はっきり意識があるんだ?
もう薬に耐性が付いたの、

良いね
抵抗される方が興奮する


久し振りだね、澪
俺を覚えてる?、って


何されてるかわかる?

もっと昔みたいに泣いて
もっと僕を楽しませて、って



理央兄さん


どうしてこんなことするの

今になって
どうしてこんなこと、、


ねえ理央兄さん、

もうどうして




惟人の言う通りだね、って

澪、君は
本当に何も覚えていないんだね、って

楽しそうに話すの


これが初めてじゃない、

君を毎夜穢したあの日あの頃から

僕はずっとこの感覚を、
他の何にも代えられない、この背徳を

忘れたくても、嫌でも忘れられなかったのに


こんなに酷くしたら
君を殺してしまうかもしれないのに、って



ごめんね
それでも僕は止められない

この快感さえ手に入るなら
僕は何もかもどうでもいいな、って


僕はどうしても君を穢したい、

どうしても、やめてやれない、って



ねえ、いっそのこと
乃亜も呼んであげようか

懐かしいよね澪

君は乃亜の事も忘れているのかな、


その他大勢の事も?って



見下したように
冷たい乾いた微笑み浮かべたまま

泣く私の頬を撫でて


唇を唇で塞がれて
息が出来なくて

深い奥に何度も入ってこられて

激しい衝撃に
目の前真っ白になる



苦しくて

胸が張り裂けそうで



理央兄さん

ねえ何を言ってるの、


あの頃っていつ、

何の話をしているの

どうして乃亜兄さんの話になるの
なんのこと、



頭の中チカチカする


私は何を忘れているの

わからないよ苦しい、


恐ろしい、


怖いの



どうしてあんな事するの


理央兄さん
奥さんもお子さんもいるのに、


どうしてこんな事、




口に出したら

また冷めたような目で私を見て


馬鹿なの

自分が酷い目に遭ってる時に人の心配?
こんな時に一体誰の何の心配をしているの

君の思考回路って
本当に昔から、呆れるほど残念だよね

どれほど無垢なの

愛だの恋だの、そんな下らない感情で
こうして君を組み敷いているとでも思っているの、

世の中全てが
愛し合う夫婦ばかりだと思ってるの、

可愛い馬鹿な澪、
君はいつまで経っても本当に子供みたいだね、って笑うの


あまりに愚かで浅はかで真っ白で

澪がそんなだから葵は皆、
君をボロボロに傷付けて穢したくなるんだよ


惟人の好きになんてさせない、

あれも大概間抜けだけど


どれほど正論を並べようが
法なんて、あれの掲げる正義なんて

金や圧力さえ掛ければ
こうして簡単に、幾らでも揉み消せるのにね、って


逃げ場や救いなんてない、
許さないよ澪、


君を幸せになんてしてやらない


ずっと探してた

もう一度君を穢すチャンスを

十年以上前から、僕はずっと模索してた


君を此処に誘き寄せるのでさえ

二年もかかった


惟人がうまく隠すから
これでも苦労したんだよ

やっと見つけた


澪はまたこれから生涯
僕の玩具になるんだよ

嬉しい?、って嘲笑うの




涙で何も見えなくなった



いっそ今すぐ殺して欲しいと思った





何を言われているのかわからない


何も思い出せない、



何だっていい、

もう何でもいいから


やめて欲しい

触れないで欲しい



体の中

入ってこないで…



だから退院出来ないんだって分かった


治療は順調な筈なのに
リハビリずっと頑張ってるのに

どうして身体良くならないのか

夢を見る度に
どうしてこんなにいつも体が重いのか





行為に耐えれる身体ではないのに、

あんな風にされたら
息が出来ない

心臓が耐えきれない、


あんなこと続けられたら、

いつか私死んでしまう、


浅ましい自分の体に

何より絶望する



どうして今なの、




いつのまにか意識を失って

次目を覚ました時には
毎回何も無かったみたいに服も体も

今日ははっきりと覚えてるけど
いつもなら記憶もなんとなく朧げで
ぼんやりとしか覚えていなくて

でも体の奥の違和感は消えないから、

夢を見た後、
どうしてこんなに生々しい感覚があるのか

どうして今になって
理央兄さんとのこんな夢を見てしまうのか、


毎回こんな夢を見た後は
熱が出て何日も寝込むの


それもこれもどうしてか

ずっとわからなかった



夢だと思っていた私はなんて馬鹿なの







目を覚ました頃には

看護師さんが朝の検診に来ていて


担当の看護師さん
そんな日はいつも私が起きると

良く眠れましたかって、
変な目で探るように窺うように私を見てくる

それもやっとわかった、



理央兄さん

この人のこと、
お金で権力で、協力させてるの、?


あと他に何人協力させてるの、、


あなたは誰

そんな人なの
そんなに恐ろしい人だったの


冷たくても乱暴でも
無理矢理体を繋げられても

愛していますよって
口付けだけは優しい貴秋の方が、

よっぽどましだと思った



私の記憶にある理央兄さんは
確かに優しかったのに、、



かなしい、

こころがいたい、



どうして此処にいるの

大阪に暮らしている筈なのに、

葵の人達は全員
私への接近禁止命令があるはずなのに


こんな事表に出たら

理央兄さんもあの看護師さんも


取り返しのつかない事になるのに

全てを失うことさえあるのに


病院長ともあろう人が
何て事をするの、、



奥さんお子さんの事を思うと

とても言えない、

もう誰の家庭も壊したくないのに



こんな事

信じてもらえるとも思えない、


また妄想だって、
幻覚を見ているだけだって、

どうせ取り合ってもらえない

言えないよこんな事



兄さん

助けて欲しい




言えない

とても

2018/12/25(Tue) 12:37 

◆no title 

絶望しかない、

退院させてもらえないのはその所為なの?

全部仕組まれている事なの


どうして、

2018/12/25(Tue) 07:44 

◆no title 

どうしてお昼寝なんてしちゃったんだろう

当分会えないなら
尚更会いたかった

眠らなければ良かった

髪を撫でられて
頬や額に唇が触れたような気がしたのに


起きれば良かった、




兄さん


早く帰ってきて

2018/12/24(Mon) 20:44 

◆no title 

起きたら
兄さんはもういなかったけど

ちゃんと会いに来てくれた
会えなかったけど


兄さんからの
クリスマスプレゼント

ハリーウィンストンの
ダイヤモンドループの指輪とピアスとネックレス

起きたら
ベッドの横のテーブルに置いてあって

シンデレラのメッセージカードに
兄さんからのメッセージ

「Merry Christmas

Only you can make me happy or cry.
I can’t imagine how my life would be without you.
I can’t live without you.
I love you more than words can say.
No matter how much time goes by, I love you.」



もう一つ、
JIMMY CHOOの可愛いラッピング

開けたら

ジミーチュウの
シンデレラのガラスの靴

眩しいくらい綺麗

私の足に
ぴったりのサイズで

でもこれは履けないよ
綺麗過ぎて

宝物置いてる飾棚の1番目立つ所に
飾って置いておく


テーブルに置いてあるメモ書きにも
兄さんからの書置きがあって

多分私が眠っていたからかな

クリスマスなのに
一緒に居てやれなくてごめん
出張で暫く会いに来れないけど
信じて待ってて、って

プレゼントは2月15日に
お前を連れて行きたい場所があるから
その時身に付けて、って


兄さん

ありがとう



会いたい

2018/12/24(Mon) 19:42 

◆no title 

不安な訳じゃないけど
負担になりたい訳じゃないけど

何にも不満なんてないけど


寂しい


沙月ちゃんや兄さん

困らせたくないけど
負担になりたくないけど


毎日一人は寂しい

広い病室に一人きり



夜がくるのが怖い

眠りたくない
怖いの

見たくない夢を見る

見るたびに熱が出る


眠りたくない


怖い

2018/12/24(Mon) 12:49 

◆no title 

お店にいた時は
貞操についての概念が異常に欠落していて

元々ずっと貴秋の玩具だったから

触れられる事
体を委ねる事

そんな大切な事だとは思っていなくて

体を委ねるべき相手への感情も
ちゃんとよくわかっていなかった





………ううん、嘘

本当は違う

貴秋の事なんて関係ない

私はちゃんとわかってたの


子供が出来る行為は

心から愛し合う二人が為す神聖な行為だって

ちゃんとわかってた


私自身が過ちで生まれた子だから
罪の子だから

本当に愛している人にしか
体は捧げてはいけない

たった一人の大切な愛しい人と愛し合う、
何より尊い行為だって

誰より理解しているつもりだった


だから指輪を作ったの


だからこそ
世界で一つの指輪を
互いの薬指に嵌めたかった

たった一人の人だから


指輪が届くのを

今か今かと待っていたの


永遠を誓う、誓い合うつもりで




兄さんと
初めて結ばれた日から

最初で最後、
私の魂の伴侶は兄さんだと思ってた、

私は信じて疑いもしてなかった


素肌重ね合わせて
唇を重ねて一つになる時、

体の中に兄さんを感じて

溢れる程身も心も
兄さんでいっぱいになった時、

少なくとも私は
愛されていると感じたから

言葉交わさずとも
愛し合っていると思ってた


他の誰でもない兄さんだから

世の中にこんなに幸せな事があるのかと思った

これを人は愛と呼ぶんだと思った


額と額合わせて目を閉じて
このまま時が止まればいいと願う程

あまりに幸福で

愛し合っていると思ってた

私が求めるのは
私が体を捧げたいと望んで身を委ねるのは

心から愛する大切な兄さんだけだから


兄さんも

同じ想いだと思ってた


抱かれるって、抱くって、

SEXって

そういうものだと思ってた


異性として、伴侶として、
唯一無二の恋人として、

愛を確かめ合う行為だと思ってた


あの日優紀子さんに会うまで、





あの日あの瞬間、

私は何も信じる事が出来なくなった


決して兄さんの所為ではないけれど


あれ以来

二度と誰の事も信じなくなった


兄さんにとって
私との行為は愛じゃなかった

兄さんにとって
私は添い遂げたい相手ではなかった


私は兄さんの
魂の伴侶じゃなかった


あの頃

私にとって

私の毎日は兄さんが全てだった

兄さんだけが救いだった


本当に少しも何にも
決して兄さんの所為ではないけれど

母さんを亡くした時より

誰に何をされた時より

今まで生きてきたどんな瞬間より
一番悲しかった

あれほどの絶望を感じた事はない

本当に目の前が真っ暗になった


貞操もSEXも愛も、
体を委ねる意味も兄さんの事も

途端に何も分からなくなった


私は私という存在が

生まれてきた意味すら

もうわからなかった



指輪を埋めて
薔薇園を後にして

今でも覚えてる
夜中に自分の家に帰ったら貴秋がいて、

惟人の婚約者に会ったんでしょう、って


酷い顔ですね
漸く目が覚めましたか

だからあれ程忠告していたのに
俺の言った通りだったでしょう

惟人はお前を愛してなどいない

贖罪や同情も枯れ果てて

お前への慈善事業に
あれもいい加減飽きたんでしょう

所詮あれもただの男ですよ
何の採算も出ない出来損ないの穢れたお前を
誰が妻になどしますか


愛している、と
ただの一度も、言われた事すらないくせに、って


憔悴しきった心に
貴秋の毒は恐ろしいほどよく効いた

沁み渡るようだった


貴秋はどうして私を抱くのって
ほぼ無意識に咄嗟に聞いてしまったの

貴秋は嘲笑って

お前の悲痛に歪む顔を見るのが
俺は一番興奮するからですよ、って



救いも何もない

この世界には
私の幸せは存在しないんだと、

生まれて初めて
生きてきて生涯たった一度だけ、
自分の心が壊れる音を聞いた

耳の奥
薄いガラスが割れるような音


涙が出る感情さえ

もう少しも残っていなかった



そこから先の記憶はなくて


気が付いたら貴秋と話した時間から
丸一日経っていて

私は全く知らない電車に乗ってた

大学の事なんて後付けでしかない

知らない間に
沢山の電車を乗り継いでいて

夜中終点京都に着いて
駅員さんに声を掛けられて

漸く思考を働かせて考えた

戻るつもりは絶対になかった
此処で一人で暮らそうとただぼんやり思った



それからは

私はゆっくり時間を掛けて
ただ死ぬ場所を探してた


それまでの日々なんて
本当は何だってよかった

すぐに死ぬのだけはいけない
心根が優しい兄さんはきっと気に病むから


時間を稼ぐために
それまで生きていくために


心の拠り所を探してた

その時救ってくれたのがママだった


店の女の子も
みんな天使みたいに可愛くて

お姫様みたいな女の子とか
中性的な子とかボーイッシュな子とか
色んなタイプの女の子がいたけど

酔うと殆どみんなキス魔になる

世の中の女の子が
あんなに大胆で積極的な生き物だって知らなかった

毎日キスされてた
仕事中も休憩中も帰り際も
深い深いキス

エスカレートしてくると
服の中にまで手が入ってきて
そんなお店じゃないのに

女の子しかいない空間だから
みんな開放的になっちゃうのかな

私は病気の事もあって
アルコールは一切摂取しないから
女の子のテンションについていくのが大変で

だけど


行き場のない悲しさと寂しさを
誤魔化すにはちょうど良かった


酔ったママにも
いつも個室に連れ込まれて

もっといやらしい事沢山されてた

店の女の子からのスキンシップも
何ヶ月か経った頃には完全に慣れてしまった


愛されているみたいで嬉しかったの

店の女の子は
本当にみんな可愛くて優しくて

みんな誰に対しても
虐めや悪意なんて少しもなかったから

触れられて怖いとは思わなかった



嫌われない世界なんて夢みたいだったから

優しくしてもらえて嬉しかった




お客様に騙されて
一度お酒を飲んでしまった日があった

今まで一度も飲んだ事なかったから

甘くて少しも苦くないのに
とてもアルコール濃度が高いカクテル

たった一杯で
酔っ払ってしまって

椿ママが直ぐ控え室に連れて行ってくれたけど
全然酔いが覚めなくて

頭ふわふわするのに訳もなく泣けてきて
泣きじゃくって

とても寂しくて甘えたくて

目の前のママに縋り付いて離れなかった


その日は早退
そのままママの家に連れて帰ってくれた


自分からキスを強請って

一人はさみしい、
ママと一緒に寝たい、って


椿ママ

もう可愛いから食べちゃう、って

大人の添い寝は
ぎゅってするだけじゃ終わらないのよ、って


キスも触れ合いも
お店でされるのの比じゃないくらい

濃密に食べられてしまった


店の女の子も副社長も

誰も知らない

私だけが知ったママの秘密


ママは胸も大きくて
誰よりも女らしいセクシーな美しい女神だけど

性別は女の人じゃなかった

それ以外は安全に女の人なのに
体の中にママが入ってきて
とても驚いた


ママは
物心ついた時から
好きな子は全員女の子だけど
生まれた時から心は女だった、って

だけど
今のありのままの自分を
何より愛しているから

親が生んでくれた大切な体に
一切メスを入れる気はない

体はこのままでいいのって言ってた

あの綺麗な大きい胸は
ホルモン治療とヒアルロン酸注射だけで出来てた

私が大きな胸に憧れるようになったのは
ママに出会ってから


こんな体、気持ち悪い?って
茶化すように聞いてきたけど

ママは全部が女神みたいに綺麗で

体の一部が例え男の人でも
私にとってママは美しい憧れの女性でしかないから

少しもそんな風には思わなかった

女の人でも男の人でも
たとえどんな体でも
ママは眩しいくらい綺麗

優しいママを大好きな気持ちは
何にも少しも変わらない

あの日声を掛けて
こんな私を拾ってくれたのが
ママで本当に良かった

そう伝えたら

ありがとうって
ママは泣いて笑ってくれた


男の人でも
心優しい人はいる

ママは女の人だけど
ママの体が男性だったおかけで

私の男性恐怖症はそれから少しずつ緩和された

初めて兄さん以外の男の人の体を
怖くないと思えたから



その日から

与えられるまま求められるまま
何度もママに抱かれた


ママは貴秋みたいに酷い事言わない
無理矢理体、繋げたりしない

私の気持ち、私の体最優先に
宝物みたいに優しく優しく愛してくれたから

家族みたいに
血の繋がった本当の母や姉のように
ママの事、ほんとうに大好きだったから

もう抱かれちゃいけない理由なんてないと思った

この行為に
とても意味があるものだなんて

もう二度と思えなかったから

ただ快感と
心を誤魔化す為だけの行為にしか

もう思えなかったから


愛されているみたいで
こんな私の存在を許してくれているみたいで
必要とされているみたいで

あまりに夢のように幸せだったから




もうそんな逃げ場のようなものがないと

とても生きていけなかったの




だけど兄さんに会って

兄さんの瞳
傷付く顔を見て

私はとてもいけない事をした気持ちになった





兄さんが店に来て
ホテルに連れて帰られたあの日、

ソファの上
私を抱き締めたまま
パジャマから覗く鎖骨や首筋に散るキスマークを見て

それは、誰が付けたの、って兄さん


ママ、って言ったら
硬直するみたいに私のこと強く抱き締めて


澪はあの女社長が好きなの、って

彼女を愛してしまったの、って



兄さんの言葉の意味が
よくわからなかった


ママは優しい、って

ママの所に早く帰りたい
帰らせて、


ママは私の事
殴ったり犯したりしない、

こんな私を
ずっと置いてくれるって
ずっと此処にいていいって言ってくれてた


ママは優しかった頃の母さんみたい

だからママが好き


私にはもうママしかいないから


ママは兄さんみたいに
私の事優しく優しく抱いてくれる、って
話す言葉を遮って

兄さん

澪、って泣きそうな声で
私を胸に閉じ込めて掻き抱いて
駄目だと力無く首を振るの


澪、

お前のそれは
愛ではないよ、って


寂しさを
履き違えているだけだ

澪は優しくされれば
誰にでも体を委ねてしまうの、って

俺でなくても、

優しい人であれば何をされても、
優しければ誰が相手でも澪はもういいの、って

澪は彼女の
ただの愛玩物に成り下がるつもりなの、って


とても苦しそうに言葉を吐き出すの



駄目だよ、澪
駄目だ

そんな簡単に
身を任せてはいけない





こういう事は
SEXは

お前が本当に
心から愛している人と、

心の底から相手の全てが欲しいと、
自分の全てを捧げたいと思った時に為す行為だ

自分にとって唯一無二の、
大切な、誰より愛しい存在と交わすべき行為で、

澪、

俺が何の為に
今日まで生きてきたと思っているの

俺以外の人間に
心開いたりしないで

俺が必死に守ってきた澪を、
容易く誰かに明け渡したりしないで、


今すぐ俺の元へ帰ってきて、って


愛してる、澪、って



何を言われているのか

全くわからなかった


兄さんの気持ちが少しも見えなかった


それならどうして

どうして兄さんは
ずっと私を抱いてたの

私が強請るから?
それとも贖罪?同情?

私を抱く兄さん
私を抱くママ

何が違うの、

どうしてママは駄目で兄さんはいいの、


愛する人と為す行為なら
兄さんはどうして私に触れるの


それなら兄さん
あなたはどうして結婚するの

私を置いていってしまうのに

あなたには
他に愛する女性がいるのに



どうして今更

愛してるなんて言うの


私を愛しているなら

兄さんはどうして別の人と結婚するの



どうして今更、

迎えに来たの




どうしてあの日


私を捨てたの







もう何も聞く事が出来なかった

それから今でも

二度と何も聞けない





私は今も

傷付くのが怖いの


あれから十年以上経った今でも

愚かな臆病な私は

兄さんの言葉を、兄さんの愛を

兄さんをいまだ信じることが出来ないでいる


疑念懸念を問い質して
確信に迫る勇気がどうしても出ない


差し出される手を取って

もう一度捨てられたら

今度こそ私は本当に生きていけないから


傷付くのが怖くて

もうあんな思い、二度としたくなくて


どうしても応えられないままでいる




手を取って捨てられるより

この曖昧な関係を続けていた方が
ずっと兄さんの腕の中にいられる

今のままで十分幸せだから



兄さんを失うのが怖くて


どうしても頷けない











どうして連日こんな事ばかり書くのか

どうして昔の事ばかり振り返るのか



兄さんが来てくれないから


私が秋久さんとの話で泣いた日以来、

一度も兄さんに会っていないから

あの日以来
兄さんはお見舞いに来てくれないの


年末だから忙しいんだってわかってる
連絡もろくに出来ないくらい忙しい事わかってる

だけど




最後に会った日

病院を後にする兄さんの姿
いつものように窓から眺めてた




兄さんの隣に

優紀子さんを見た



デジャヴ

目眩がした、


十年以上経った今でも

寄り添う二人が
とても美しく眩しく見えた


胸がいたい






兄さん



兄さん


何にもいらないから

行かないで



何も望まないから

良い子でいるから


どうか私をそばに置いて、









捨てないで

2018/12/19(Wed) 06:48 

◆no title 

沙月ちゃん

大丈夫かな



ゆっくり休んで欲しい


早く良くなりますように…

2018/12/18(Tue) 18:53 

◆no title 

三日に一度は嫌な夢を見る

同じ夢


起きてからも違和感があるくらい
生々しい夢


必ず熱が出る

必ず体調を崩すほどの酷い夢、


またフラッシュバックかな

2018/12/17(Mon) 14:54 

◆no title 

秋久さんと話した日から
ずっと色んな事思い出してた


どうして勝手に大学を辞めたか

誰にも言ったことなかったけど

大学も
エスカレーター式のようなものだったから
小学校や中学や高校とあまり変わりなくて

皆んな生まれも育ちも良さそうな
清楚でお上品なお嬢様ばかりなのに

とても陰湿で

同性には好かれた試しがなくて

トイレの壁に押し付けられて
無理矢理服をたくし上げられて

背中の火傷の痕とか
父さんから受けた打撲とか火傷とか傷とか
手術の痕もそうだけど

気味悪がられて
写真を撮られて

その写真が
大学の一部の人達の間で
回されるようになって

それだけなら
私の事だけならよかったんだけど

兄さん
よく私の事
大学まで迎えに来てくれていたから

その痕が
兄さんがつけたものだって

兄さんが暴力を振るうような人だって

事実無根のデタラメを
周囲に広める子がいて

元々その子
兄さんの事が好きで
昔から色んな事をしてくる子だったけど

今まではずっと
私に対する攻撃だけだったから
何にも気にしてなかった


小学校から

嫌がらせとか虐めにはもう慣れてて


色んな子、
女の子も男の子も

学生の子達が仕掛けるものなんて全部

病気の痛みに比べたら
大人の罵詈雑言に比べたら
父さんに受けた暴力に比べたら

とても取るに足らないもので

捨てられたり汚される物にも
一切執着なくて

どんな目に遭おうと

自分のことなんてどう広まろうと

どうだってよかった




だけど兄さんは違う


兄さんは


下らない暇潰しに

兄さんは決して穢されるべき人じゃない


完璧な兄さんは

誰からも慕われ賞賛されるべき人であって


こんな私を
ずっと守ってきてくれたのに

決して手をあげたりするような人じゃないのに



そんな最低な嘘

許せなかった


兄さん自身は

噂とか人の目とか
たとえ何を言われようとされようと

全く少しも気にも留めない人だけど

でも私はどうしても
それだけはどうしても許せなくて

そんな酷い嘘
誰も一言も口にして欲しくなくて

ほんの少しもこの世に存在して欲しくはなくて



消えてしまおうと思ったの


目につく私がいるから

ありもしない事が拡散されるなら


目障りな私さえいなくなれば

噂なんて霧のようにすぐ晴れる


もういい加減
全部に疲れてた

どこまでも
兄さんの足を引っ張る事しか出来ない自分に


秋久さんは何にも間違ってなくて

私は本当に昔から
優秀な兄さんの足枷でしかなくて

私の存在が
完璧な兄さんの唯一の欠点だった



事務所を設立したばかりで
特に大切な時期で

優紀子さんとの結婚も控えてるって
あの日わかったから


葵惟人の名前を

下らないデタラメで、下らない私の存在で

汚すわけにはどうしてもいかなかったの



何もかも置いて
携帯番号も替えて

京都へ引っ越して

夜の繁華街の近くに家を借りた


仕事はバーテンダーをしてた

夜が怖くて
重度の不眠症だったから
いっそ夜に働きたくて

体調も不安定で
大学も中途退学した私に
まともな仕事が出来るとも思えなかった


その頃は酷い男性恐怖症も患っていて
極度の人見知りも治したかったから

夜のバーで働く事で
少し強引な荒治療にでもなればいいと思った


元々綺麗な可愛いカクテルを作るバーテンダーに興味があったの

だけど
流石にいきなり男性を相手にする訳にはいかないから

同性愛者専門というか
女性会員限定の高級なバーに

運良く雇ってもらえる事になった


どんな店があるのか
夜の繁華街を歩いて見て回ってたら

偶々そのバーの社長が
私に声を掛けて下さったの


すごく綺麗で胸が大きくて
真っ赤な口紅がよく似合うセクシーな
年齢不詳の女神みたいな美しいお姉さん

内面も
気さくでとても大らかで優しくて
誰にとっても母のような姉のような温かい人格者で

どんなに失敗しても
たとえお客様を怒らせてしまっても
必ず優しく守って下さった


お化粧品や衣装も全部
社長が、椿ママが用意してくれた

お客様の席につかない、
バーテンダーの私の衣装まで
いやらしいというか
少し際どいものばかりだったけど

背中とか傷や痣は
絶対に見えない物を必ずプレゼントしてくれて

プライベートでも
あんな愛想も愛嬌もない無口で、
感情も表情も薄かった私に

行った事ない場所、食べた事ない物
沢山の未体験を経験させてくれて

とにかく本当に
とても良くして下さったの


ママは酔うと

誰彼構わず触れて口付けて
私も勤務中に何度も襲われたけど

そんなの全然少しも嫌じゃなかった

こんな私に
とても良くして下さったから


人付き合いはその頃も
今でもとても好きじゃないけど

ママと過ごす時間だけは別


椿ママと過ごす時間だけは

兄さんの事忘れられた


家の事も父さんの事も
貴秋の事も何もかも

ママのおかげで全部

なんでもない事のように思えた



引っ越してきてから

ママのおかげで
初めて心から笑えた瞬間があって

思わず意識せず笑ってしまった瞬間

ママは私を見て
泣いて喜んでくれたの


誰よりも恵まれるべき美しい子だから
恵美

ママが私に付けてくれた源氏名


こんな私の事

そんな風に想ってくれるママの気持ちが
何より嬉しかった

子供が生めない体のママの娘に
いっそ私がなりたかった

子供を望むママの元に
私が生まれたいとさえ思った


優しい瞳の優しい椿ママが大好きだったの



死に急ぐような気持ちで
全てを手放すような諦めるような気持ちで

京都へ来たけど

私にとっては
何にも代えられない宝物のような
キラキラ輝いた日々だった

自分の手でお金を稼ぐ事
自分の力で生きていく事

こんなにも尊い、
恵まれた事だとは思わなかった


相変わらず眠れはしなかったけど

初めて夜が怖くなかった



勿論全部が全部

幸せとは限らなくて


私の隣の家のおばあさまが
とても良くして下さる方で

ほんとうのお祖母様のように思えて
仕事は休みの日はずっとおばあさまと過ごしてたの




亡くなられた時は

本当に絶望した


いっそ私も死んでしまいたいって思った


それに加えて
煌びやかな世界は危険と隣り合わせで

結果的に二度も知らない人から性的暴行を受けた


一人目は男性
ずっと付きまとわれてた人

二度目はお客様だった女の人と全く知らない男性
二度目は未遂に終わったけど


私は幼い頃から貴秋の玩具で

そういう事
いっそもう慣れてしまっていて

殺されなかっただけましかなって
冷静に考えながら救急車を呼んで

淡々と病院に運ばれて
通報してもらって処置してもらって
被害届とか出来うる全ての事を済ませて

緊急避妊薬を飲んで家に帰った


ぼろぼろの私を見て
ママの方が泣いてた

生理がくるまで酷い痛みに耐えた三日間、
ママはお仕事休んでずっと一緒に過ごしてくれた


何より
レイプの後、

直ぐに無意識に助けを求めたのが
兄さんではなくて

椿ママと
実際には会ったこともない沙月ちゃんだったことに
自分でも驚いた


犯された事より
悲しみや傷み、苦しみより

ちゃんとゆっくりだけど着実に
兄さん離れ出来ている自分にほっとした


私はこのまま
一人で生きていくつもりでいたの




それなのに
見つかってしまった

職場へ兄さんが来た時は驚いた

兄さん探偵まで雇って
私の事探してた


ある日
ママがお客様のお見送りに外に出て

何かあったのかと
心配するくらい長い時間が経ってから
やっとお店に戻って来たママの隣に、

兄さんがいたの


お客様も店の女の子も
お店に男性が入ってきて凄く驚いてたけど

私はママに続いて
入ってくる人影が兄さんだって
直ぐに分かったから

その瞬間
無意識にバックヤードに逃げた


他のお客様を混乱させないように
ママと兄さんは直ぐに個室のVIPルームに入って行って


暫く経った後
ママに呼ばれた


兄さんがいる部屋の前
ママは動揺する私を見て

やっぱり恵美は
迷子の猫ちゃんだったのね、って

優しい瞳で見つめて
頬包んで優しく撫でて
慰めるみたいに唇に軽くキスをくれて


まるでお別れみたいにママ
私に微笑い掛けるから

嫌です、って

捨てないで
お願い、追い出さないで
此処に置いてママ、って泣いて縋ったけど


椿ママ悲しそうに微笑んで
涙流して首を振って

澪に戻る時がきたのよ、って


本当に澪を害する人なら
ママは全力で守ってあげるけど

少なくとも
彼は澪を傷付ける人じゃないって
彼の目を見ただけでわかった

彼が澪の王子様だって、ママはわかるの
彼は必ずあなたを幸せにしてくれる

欲を言えば
ずっとママの可愛い恵美で居てほしかったけど

心優しい美しいあなたは
いつまでもこんな所に居たら駄目、って


恵美でも澪でも
ママはいつまでもずっとあなたが大好き、って

本当のお母さんみたいに
優しく抱き締めてくれた



だけど私は

ママと一緒にいられない澪なんていらない

誰の娘でもない、
誰にも望まれない厄病神の澪なんて大嫌いだよ

幸せって
どうして長く続かないの


あの日のことは今でも忘れない




部屋入って直ぐに

抱き締められて


澪、やっと見つけた、って

まさか本当に、こんな所で働いているなんて、って

声さえ久しぶりに聞いた兄さん

心が震えた

だけど


ママのお店
ママの全てが詰まった大切なお店を

こんな所だなんて、言わないで欲しかった



抗議の気持ちで目を合わせたら


いつも穏やかな兄さんの瞳が

動揺焦燥安堵悲しみ怯え期待落胆歓喜
ほんの微かな怒り

色んな感情で揺らいでいて

今にも泣きそうに見えて


その瞬間

とてもいけないことをした気分になった



同時に

もう会わないつもりでいた兄さんに会って

胸の中兄さんへの感情が蘇って

必死に閉じ込めていたもの
全部胸の奥底から溢れ出して



でも忘れなきゃいけないから

私は兄さんと
絶対にさよならするつもりでいたから

咄嗟に目を逸らして
何も答えなかった



もう澪じゃないの

帰って、
もう此処へは来ないで、

誰とももう二度と会いたくないの、って

何も話さなかった



どうして会いに来たの、兄さん

放って置いて欲しかったのに


優紀子さんとは
どうなったの


未だに聞けない



薬指に輝く優紀子さんとの指輪が消えていて


その日から

私に対しての態度が変わった


兄さんからの優しさが
あからさまな愛に変わった


贖罪か同情か

今でもよくわからないけど



愛してる

はっきりと告げられるようになったのは
真っ直ぐに届けられるようになったのは

この日再会した時から





また私は兄さんの幸せを

壊してしまったんだと思った



強引に兄さんに連れられるまま
仕事場を後にして

兄さんの車で
兄さんの泊まるホテルに帰って


車の中でも
運転手の人の目とか
気にも留めずに

後部座席
ずっと私を抱き締めたまま

ホテルに帰っても
お風呂から私が出るなり抱き上げて

ずっとソファでもベッドでも
私を抱き締めたまま


愛してる、って囁くの



やっと眠ってくれた早朝


そっと腕から抜け出して
ホテルから兄さんから逃げ出した


私の逃げ癖、
逃亡癖が本格化したのも
この頃から



店にも戻らず
ずっと家に引きこもってたけど

兄さんお店に行って
私の行方不明をママに伝えて

心配したママが直ぐ家の場所を兄さんに伝えて

お昼にはもう兄さんが家に来た



それから何日も
何週間も

一ヶ月近く

家に帰るよ、って説得する兄さんと
押し問答を繰り返している内に


実家にも私の居場所がばれて


兄さんがお仕事で
京都を離れた日、


繁華街近くの私の家の前に

葵の、
父さんの送迎車が停まってた



そこからは
あんまりよく覚えてない




今までで一番の

とんでもない逆燐に触れた私は


物置に何日も閉じ込められて



気付いたら病院にいた

体中が痛かった



それからは
二度と逆らう事なんて許されなかった


退院する翌日から

過密なスケジュールで
お見合いの予定が立てられていて

兄さんとさえ
ろくに会えないまま

パーティー
食事会お茶会とか
めまぐるしいほど毎日沢山の人に会って
沢山の男性とお話して

気付いたら
父さんにとって一番条件の良い貴秋と
結婚する事になってた



だから


私の家、

あの後
住んでいた家がどうなったか

使っていた家具、物
ママにもらった沢山の宝物はどうなったか



ママが今どうしているのか


私は何も知らない



知ることさえ
とても許されなかった




いつもハッピーエンドでは終わらない


私の思い出は

いつも最後は悲しいの


いつまでも幸せに暮らしました、
そんな幸せなお伽話に憧れてる



幸せだった事、思い出すと

結末はいつもバッドエンドで

忘れたくないけど

いっそ忘れたくて、



だから

幸せな瞬間だけ、

幸せだったほんのひと時だけ思い出すの


輝いていた大切な瞬間だけ、

そっと胸の中から取り出すの




だけど
今日は上手く思い出せなかった




椿ママ

今どうしてるかな、

2018/12/17(Mon) 14:49 

◆no title 

やっと少し熱が下がったけど

今日は朝からとても気持ち悪くて
昨日から何も食べられなくて

ベッドにぼんやり座って
吐き気と戦ってたら

私の病室に誰か入ってきて

振り返ったら秋久さんだった



あの日から熱を出したって惟人から聞いて、
心配で会いに来たんだ、って


具合はどう?
ごめんね、僕の所為だね


澪に何を言ったのって
惟人に怒られたよ、って


ベッドに腰掛ける私の目の前に跪いて

私と目線を合わせて、そっと額に触れて


まだ下がらないんだね
辛いね、ごめんね、って


優しく労わるように
柔らかく微笑んで下さるの


でも吐き気が抑えられなくて

返事も何も返せないまま
私の病室にあるトイレに急いで駆け込んで吐いたの


ドアを閉める余裕さえなくて


秋久さん直ぐに側に来て
寄り添って背中をさすって下さるけど

吐くところなんて見られたくなくて
だからわざわざトイレに駆け込んだのに


我慢しようと思うけど堪えきれなくて

あっち行って欲しいって首を振ったら


大丈夫
娘も身体が弱いんだ

慣れてるから、
僕の事なんて気にしないで

我慢しないで
全部出して、って


私の髪の毛
汚れないように濡れないようにかき上げて

ずっと落ち着くまで
介抱して下さるの


渡して下さるお水で口濯いで

もう何も出ないけど

もう動けなくて


吐き過ぎて
貧血で気絶しそうで
だんだん意識朦朧としてたら


抱き上げて

ベッドまで運んで下さったの


軽いね
とても小さくて、娘と変わらない、って

優しく微笑んで
ベッドに寝かして下さって

お布団まで肩まで被せて下さる



ベッドの隣の椅子に腰掛けて

私の髪や頬撫でながら

本当に娘を見るような温かい瞳で


少し楽になった?、って

少しずつ白湯を飲ませて下さって


惟人から
貴女が好きだと聞いたから、って

私の好きなスイーツ店の
私の好きなフルーツゼリーまで買って持参して下さったみたいで


お見舞いの花はカキツバタ

花言葉は
幸せは必ずやってくる


カキツバタの開花は5月頃の筈なのに

時期じゃないのに

わざわざどうやって用意して下さったの、



温かい優しさに

とても泣きそうになった






秋久さん


愚かな懺悔を聞いて欲しい、

僕はね
あの頃、優紀子が好きだったんだ、って

また昔話を始めて



優紀子には完璧な惟人と
幸せになって欲しくて

花嫁になる優紀子の憂いを
どうしても取り除いてやりたくて


あの頃
何の志も夢も無く
ただ何と無く生きていた僕には

目標へ向け躍進する惟人が眩しくて
憧れでもあって自慢でもあって


そんな惟人と優紀子が寄り添う姿は
何にも代え難い、美しく尊い唯一の理想で


だから

惟人が優紀子よりも

何よりも優先する貴女の存在が
どうしても惟人を縛る足枷に思えて

無知で浅はかな僕は

何の罪もない無垢な貴女を
標的にしてしまった、って



こんな僕の事、
小さな貴女はずっと慕ってくれていたのに

少なからず
心を許してくれていたのに

どんな目に遭っても
貴女は誰の事も傷付けない優しい子なのに

そんな貴女を
僕があの日壊してしまった


傷付いた貴女の顔が
ずっと忘れられなかった

結婚して
娘が生まれてからは特に、って


ずっと謝罪したかったんだ、って



頬を撫でていた手で
私の手を取ってそっと握って

痛々しい顔

傷みを堪えるような切ない顔で

秋久さん私を見つめたまま


ごめんね、って何度も謝罪を繰り返すの



謝罪を頂くような事なんて何にも

何一つないのに




兄さんも

秋久さんも


優しい人は

昔話ばかりする


過去のことばかり気にするの


いつまでも

私の過去に苦しんでる




誰の所為でもないことくらい

馬鹿な私にだってわかるのに


私は今を生きているのに





優しい秋久さん





兄さんが心許す親友が

こんなにも優しい秋久さんで


ほんとうに、良かった

2018/12/14(Fri) 01:48 

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