白夜の波紋
□第1夜
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いつからだろう
あの白い月を恋うようになったのは
見上げた夜空に
ぽっかりと咲く三日月
まるで見守るかのように
浮かぶ月は輝いていて
あたしは知らず感嘆する
銀の粒子が散らばる様に
あたしは無性に恋しくて
何度も何度も空を見上げた
――空に咲く美しい花
母さん……
――あなたが生まれた日、空の真っ白な花が、それはそれは綺麗に咲いていたの。まるで私を導くかのようにね
いつからだろう
いつからだったんだろう
あの神々しく輝く月を
憎むように――恨んでいるのは
矛盾する想いはもう届かない。
――ねえ、だからあなたは、満ちた月。あの月のように、誰かを照らし導く存在になりますようにってつけたのよ
満月。
薄く微笑む母親の表情が――いまも尚、まぶたの裏にはりついて消えない。
そのくせ、霞む記憶。大切にしまったあの頃を、あたしに鮮明に映し出そうとはしない。
否定するように。
拒むように。
母さん、と呟いた声は、誰にも届くことなく、風にかき消された。
第1夜
導くは今この場所