くすんだみどり

□よん
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鬼男君と夕子ちゃんを篁君に任せ、私は天国の見回りと称して小野妹子を探しに出た。ただ、天国は広い。以前のゴメスの母親みたいに近くにいるとも限らない。大きな溜め息が出た。

「ちょっ…太子!それは食べ物じゃありません!」

聞き覚えのある声が、そこら辺一帯に響いていた。まさか、まさか!

「だって妹子。お前こういうの好きだって行ってたじゃないか。だから…」
「言った覚えねぇよ!手汚ッ」
「小野妹子おおお!!」
「うわああああああああ!!」

三人で怒鳴りあっていたが、キリがないので終わりにした。

「え、閻魔大王様…?」
「うん。久しぶり」
「な、何故そんな親しげに…」
「それより、今日は聞きたい事があってね」

小野妹子は少し身構え、聖徳太子と視線を交わした。聖徳太子はそんなに身構えていない。冠を伸ばしている。

「君たちは最近、これくらいの小さな子供に会った?5、6歳なんだけど…」
「あ、もしかして、ゆうちゃんとおの君ですか?」
「ゆうちゃんと、おの君?」
「あの二人か!それなら知ってるぞ!異常に元気な女の子と割と大人しい男の子の双子だろ?凄くしつこく付きまとってきたけど、最近パッタリ来なくなったな」
「あの子達がどうかしたんですか?」

血の気が退いた気がした。背中を電気が走って、漏電したそれが目の前を真っ暗にした。気がした。

「いや、何でもないんだ。ごめんね…」

それだけ言って、私は立ち去ろうとした。

「閻魔大王様」

小野妹子は、座ったままで私を見上げている。彼はにっこりと笑った。

「何があったのか分かりませんが、僕にしてみれば、妹や弟みたいな存在なんですよ。だから…あの子達を、よろしくお願いします」

不可解な苦味と、切なさが私を斬った。目の前のキラキラしたものがバレないように、激しく頷いた。

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