短編集
□何だか、いきなり順番が前後しちゃった気分です
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『お兄さん。アニキ、家に連れてきちゃダメかな?!』
「…………………………は?」
この時、亮は本気で現実逃避と思考停止という二重心理を噛み締める羽目になった。
***
「…どうすんの?」
「どうって……、どうしようもねぇよ。仕方ないから……」
「…アニキ、リョーマさん? どうしたんスか?」
翔が、仲の良い幼馴染の同級生コンビを見かけたのは、レッド寮の食堂でであった。
普段の二人は、仲の良い友人が男が多いと言う理由で食堂に居る。
確かにここなら、変な気を起こそうが目撃者が必ず出るため、問題はないが……
いや、それはどうでも良い。
問題は、慕っている姉貴分(男と思っていた経緯から、呼び名は「アニキ」だが)が、心底困り果てたと言う顔でうなっている事だ。
「おー翔」
「翔。それが……」
「オレ、学期が終わってから一週間位、一人になるなぁって話」
「……………は??」
翔はフリーズした。
「いや。オレ、両親が共働きってヤツでな。オレが帰省する時、丁度二人とも別々の所に単身赴任するって事になってたから」
翔の脳にようやく十代の台詞とその意味が染み込んだ時、彼は思わず詰め寄った。
すると、その姉貴分からはこのような台詞。
ああそう言えば、さっき校長に頼んで電話させてもらってたなぁ。
思わず現実逃避しかけ……、翔は強引に思考を元に戻した。
「そ、そんな大変な事、落ち着いて言わないでよ!!」
「翔、落ち着け」
「アンタがパニクってどうすんの?」
「二人が落ち着き過ぎなんスよ〜!!」
思わず混乱してしまう翔だが、当人は心底落ち着き払っている。
「だって今に始まった事じゃないし」
「…………へ?」
「まだオレが小学校の、低学年くらいだった頃かなぁ。それが父さん母さんの普通だったし」
「そ。その十代を預かってたのがウチ。十代が諸事情で引っ越すまではそうだったから」
「は??」
「だから、幼馴染」
ああ、そういう事かぁ…と思考の片隅で納得しつつ、翔はどうにか持ち直した。
「え? じゃ、じゃあまた…」
「ちなみにウチはダメだよ。アメリカだから、越前の家」
「あ、アメリカーーー!!??」
もうこの人たちはびっくり箱か、自分の心臓を止めたいのか分からなくなった。
「そりゃ、ウチで預かれるもんなら預かりたいよ本気(マジ)で。でも無理だし」
「アメリカ行きのパスポートなんて、持ってねぇからなぁ…」
ようやく二人は、はあ…と息をついた。
「ま、仕方ないか。二人が帰ってくるのって、その次の週だって話だし」
「一週間位、余裕って感じだね」
「まあね。一応生活は出来るから……。一人ってのが退屈で仕方なくなるのが問題な訳で…」
「十代の場合、決闘(デュエル)出来ないってのが死活問題でしょ?」
「そゆ事」
そう諦めの境地で話す二人に、ようやく思考を纏め上げる事に成功した翔は、思い切った提案をぶつけてみた。
「じゃあさアニキ! 家に来ない!?」
『………は??』