短編集

□親友と幼馴染の、恋の始まり
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幼馴染の十代が、私にとっても親友であった吹雪の行方の手がかりを求め、立ち入り禁止の閉鎖寮に入ってしまった。
どうも中で、少々厄介な出来事に出くわしたみたいだけど、それは割愛。

とにかく、閉鎖寮に入った罰による退学をかけ、タッグデュエルを行う事になったみたい。

そのパートナーとして指名した翔君が、気弱な性格とプレッシャーで逃げ出そうと(何故にその手段がイカダだったのかは知らないけど)したのを、十代が止め……

たまたま通りがかった亮と十代が、デュエルを行う事となった。



「…ねえ、どう思う?」

後輩であり、友人でもある明日香が問いかけてきた。
ここに居るのは、デュエルを行う亮と十代。
彼らがそのデュエルを最も見せたいだろう翔君。
そして見物の、私と明日香、リョーマ、そして十代たちの友人の隼人君だ。


「勝敗の行方? それは多分亮でしょうね。けど……」
「けど?」
「果たしてこのデュエルに、勝敗が意味を成すかは、疑問だけどね」


十代には悪いが、強さと言う点では、「カイザー」の異名を持つ亮のほうが断然上だ。

ただ、十代が彼に勝つ事を目的としているとは、到底思えないけど、ね。




デュエルは驚くほど白熱した。

得意の《サイバー・ドラゴン》で攻める亮に対し、十代は幾つもの融合戦術でそれをかわし、または攻めている。

「ふーん。強いね、ホント。カイザーって」
「そりゃ強いからそう異名をもらっているもの。…同時に、強すぎるから面倒な事もあるんだけど」
「…え?」


私の独白に、女性陣が目を瞬かせる。


これは、親友として三年間、共に過ごしたからこそ言える事だけど………

亮は強い。
けど、それ故にどこか「冷めた」所が出来てしまった。
相手に対して常に全力を尽くすが、どこか停滞した思いを持て余している。
一応、彼と互角くらいには渡り合える私とのデュエルじゃ、結構「熱く」はなるみたいだけど。それだけでは意味がない。


けれど今、亮は(見た目じゃ分からないけど)かなり熱くなっている。
歓喜に満ちた感情が、高揚するデュエリストの魂とでも言うべきそれが、強く反応している。


どうやら、亮は十代を気に入ったみたい。
弟の友人としてのみではなく、デュエリストとして、個人として。


(でも、本当にそれだけかな……?)
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