ラストソング
□第一話
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それが、人であることを三人が判別できた頃には悟空はすでにジープから飛び出していた。
「おいっ!…ッ。大丈夫か?」
一瞬息を飲んだ悟空に気を止めるわけもなく三蔵は、悟空と同じように慌てて駆け寄る八戒と、面白半分にそれに続く悟浄に嫌気が差した。
「大丈夫ですか?!」
悟空に抱えられたものを見るに、子供か。それとも女か。どちらにしても、面倒事には代わりない。
煙草を踏み消して、そちらに行こうすれば、悟浄の場違いな声が響いた。
「うひょー!」
軽く口笛を吹いての一声。
しかし、それを介抱している八戒が悟浄をいさめる声がしない。
――なんだ?
疑問を解消すべく、今や八戒に抱えられたそれを見る。
「…ッ」
時が、止まる。
それは漆黒の髪に透けるような白い肌。
頬にはその証。紫の紋様を浮きだした妖怪だった。
その長い睫の奥の瞳は何色なのだろうか。
それは、あまりに美しく。
見るもの全てを魅了してしまうかのように、浮世離れしたものだった。
荒れた大地に落ちた一滴の紅い紅い水のように、妖艶な輝きを放つ。
その桜色の口から紡ぎ出される音は、どんな音色なのだろうか。
「さんぞー、この人。天使?」
それはあまりに美しい女だった。
「…バカザル」
「ってかすんげー別嬪だな」
「悟浄。…それにしてもなぜこんな所に…」
彼女はこの世界に生きるには、あまりにも無垢だったんだ。
第一話「出会い」*終*
2008/07/24