1

□掘り師
1ページ/1ページ


体中に何かの呪術のように刺青が彫られ、耳や顔には大量のピアス。――怖い。一般人が見るならばそう感じるだろう。
女は煙管を吸いカウンターに座っていた。店のドアが開き入ってきた客を見ると見知った男。女は目元に黒子がある目を細め口角を吊り上げた。


「久しぶりだねぇ」
「ああ。忙しかった」
「クックッ…そりゃあ、暗殺部隊のボスやってるんだものねぇ?」


男の名はXANXUS。
この店にはよく来る常連の客だ。


「彫るのかい?」
「いや、彫らねぇ」
「あら、そうかい?アタシはあんたの体に彫ってみたいけどねぇ…。安くするよ?」
「今日はピアスを買いに来た」


XANXUSは女の言葉を無視し、ショーケースに並ぶ様々なピアスを見た。


「開けるのかい?」
「ああ」
「なら、あんた好みのを作ってやるよ」


煙を吐き出しにんまりとチェシャ猫のように笑う。媚びの売らない笑みだが、何を考えているか分からないのがこの女らしい。XANXUSはそんな女を委託気に入っていた。
だからこそ店に何度も足を運ぶのだ。


「じゃあ、頼む」
「格安にしておくよ」



(その耳に、紅いピアスを。)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ