詩2

□昔話
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せっかくお出かけしたのに
おばあちゃんに会いにきたのに
なんで世界が真っ暗なんだろ
ねぇおばあちゃん知ってる?



かごにつめたパンと
年代物のワイン
森を越えたら
おばあちゃんにプレゼント

草木や鳥や
野の花やちょうちょや
動物たちと
お話しながら行くわ

森にこわい狼が出ると言われた
だけどこの頭巾は外さない
だいすきなおばあちゃんが
くれた大切なものだから


ああ
晴れた空 白い雲が パンみたいな形
みんな 私のすこしの冒険を 応援してね
振り返ってみたら優しそうに笑う 狼さん
「お嬢さん、僕とお話しようよ」
「花を摘むついでなら良いわよ」



おばあちゃんにあげる
花飾りができた
狼さんは
不器用みたい ぐちゃぐちゃ

鳥たちが忙しく
鳴くから 思い出した
早くしなきゃ
きっと待ちくたびれてる

「ばいばい狼さん」



だいすきなおばあちゃん
遅くなってごめんね
病気ひどいの? 大事にしてね
私のこと 忘れないでね
「食べちゃいたいくらい可愛い」
いつかそう言っていたね
だから 仕方ないのかも
大きなお口で丸呑み


「どういうこと?」
暗い じめじめした 風船の中におばあちゃん
私は何に食べられたの?
狼さん 私の幸せを返してよ
こんなの あまりにも あまりだわ


銃声 聞こえ 悲鳴あげて 狼さん
倒れたの ひどく揺れた 一筋 光
おばあちゃん 外よ 見てよ
眠ってるような狼さん


「大丈夫だった?」
さようなら狼さん
「無事でよかった」
花飾り その手に握り
「パーティーしようか」
ごめんね 狼さん
食べられてあげられないの
私も生きていたいの

こわい狼
生きるために食べてる
だったら私たちも
生きるためにさようなら 狼さん

「パーティーしましょう ワインとパンで」
幸せな日常




200110327


 
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