深海の姫君

□幸せってこういうこと
1ページ/1ページ


side heroine.


朝目覚めると、目の前に肌色が広がっている。
背中に回る力強い腕が与えてくれるのは、紛れもない安心感。
再び眠ってしまいそうになりながらもそっとベッドを抜け出し、間もなく来るだろう政務官を思いながら衝立の向こうへ回った。

夜着を脱いで着替え、軽く身なりを整えた頃、部屋にノックの音が響く。

『どうぞ』
「失礼致します」

入室を促せば、予想通りの姿が一声かけてから入ってきた。
官服に身を包んだ彼は、衝立から出た私に穏やかな笑みと共に頭を下げる。

「おはようございます、ルリア様」
『おはよう、ジャーファル』
「…今日もですか、」
『シンのこれは、もう直らないんじゃない?』

今だ眠り続ける我らが王は、いつものように、寝ている間に全ての衣服を脱ぎ捨てている様子。
最初の頃は驚いたが、毎日のように繰り返される光景に、今ではすっかり慣れてしまっている自分がいる。

「…私がたたき起こしますので、ルリア様は執務室の方へどうぞ」

ジャーファルは笑顔でそう言ったが、シンを見る目は笑っていなかった。


先に執務室へ行って朝食前の仕事をしていると、シンがジャーファルと共にやってくる。

「おはよう、ルリア」
『おはよう、シン』
「ルリアが起こしてくれても良いんだぞ?」
『それも良いけど…ジャーファルがどうぞって言ってくれたから、甘えることにしたの』
「さぁ、朝食の前にそれだけ片付けてくださいね」

ジャーファルが容赦なく、シンの机に乗った書類を指さす。
こうして、シンが終わるのを待って3人で朝食を取り、今日も一日が始まっていく。

シンの妻、シンドリアの王妃。
シンと、この国の為に魔法を使い、日々を過ごす。
そして、たまに本来の姿で海洋生物たちと戯れる。

魔法界にいた頃は考えられなかったけれど、今はこれが私の日常。





END
...to be next story...? (back)

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ