深海の姫君

□魔導士と魔女
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side yamraiha.


王が迷宮の中で出会ったという少女は、私と同い年くらいの魔法使いだった。

異世界から来たという彼女の使う魔法と、私たち魔導士が使う魔法。
それは同じものなのか、違うものなのか、どれほどのことができるのか。
その全てを知ってみたくてしょうがなかった。

「ルリア、ちょっと良いかしら?」
『何?ヤム』
「貴女の使う魔法を見せてほしいの!」

ルリアがシンドリアへ来た翌日、早速ルリアのもとへ向かった。
彼女の使う魔法を、ぜひこの目で見てみたい。

私の言葉に、ルリアは一瞬驚いたような顔を見せて。
そして、その表情は困ったようなものに変わる。

『魔法…』
「魔法を使うなら、俺にも見せてくれないか?」
『シン、』

どこから聞きつけて来たのか。
困り顔のルリアと私の元へやってきたのは王だった。
そして、手合せの提案をする。

「ヤムライハと戦ってみるのはどうだ?もちろん魔法でだ」
「私は構いませんが…」

困ったような戸惑ったような、それでいて期待と不安を含んだルリアの表情。
魔法を見せることなんて日常茶飯事で、私にはその表情の理由がわからなかった。

「何かあるの…?」
『ヤム…、』
「魔法のことなら力になるわ」

ルリアは魔女、私は魔導士。
名称は違えど、同じ魔法を使う者。
力になりたいと、素直にそう思った。

『…ヤムに、聞きたいことがあるんだけど…』
「うん、何?」
『…この世界では、マグルの前で魔法を使えるの?』

…マグル。
聞き慣れない言葉に、王も首を傾げる。

「マグル…とは何だ?」
『非魔法族のことです。マグルの前で魔法を使うと、魔法使いだとバレてしまうから…』

───非、魔法族

魔法使いでない者を表す言葉なら、この世界にも存在する。
私の故郷──マグノシュタットでは、彼らをゴイと呼んでいる。

「魔法使いだとバレてはいけないの?」
『うん。…魔女狩り…とか、あるでしょう?」

───魔女狩り

その言葉の持つ正確な意味はわからないけれど、魔法を使う者が迫害されていたのだということは理解できた。
そしてその言葉から、ルリアが初め、自分のことを魔女だと言うのをためらっていた理由も理解した。





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