深海の姫君

□光の導き
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side sinbad.


ルリアと出会ったのは、俺が手にした最後のジン・クローセルの迷宮の中だった。

迷宮を攻略した俺たちは、いつものように財宝と共に外へ出た。
だが、なぜか次に気づいた時、俺は迷宮の外ではない、どこか別の場所にいたんだ。
周囲が闇で覆われ、まっすぐ前方へと光の道が続いている。
その不思議な世界に、俺は、ここがまだ迷宮の中だと確信した。


───…、…

「今のは…」

光の道の向こうから、微かに物音が聞こえた気がした。
その向こうに何が待ち受けているのか。
何が出てきても良いように構えつつ進み、そして俺は光の扉を抜けた。


「…君は、…」

光に道を抜けた先にいたのは、迷宮生物や化け物なんてものではなくて。
俺の目に飛び込んできたのは、長いクリーム色の髪をした少女だった。
向こうを向いているから顔はわからないが、その髪が光を反射して輝いているのを素直にきれいだと思った。
少女の真上から指す光が、あたかも、少女がその光の中から舞い降りてきたかのような神々しさを醸し出している。

『…誰かいるの?』

澄んだ声がその場に響き、彼女がこちらを振り返る。

「…、…」

言葉が、出なかった。
俺に向けられたピンク色の瞳に、吸い込まれるような感覚を覚える。
思わず言葉を失い、見入ってしまうほど、その少女は美しかった。

『…誰?』
「え?あ、あぁ…すまない」

俺の意識は彼女の言葉によって引き戻され、そして、俺の方から声をかけていたことを思い出す。
俺のことを不思議そうに見つめる少女をなるべく安心させるように、微笑みかけながら言った。

「俺はシン。君は、ここで何をしているんだ?」
『…私は…、』

とりあえず名乗り、少女にこの場にいる理由を問えば、途端に少女の顔があせったようなものに変わった。

『…ここ、どこ…』

それは俺に向けられた言葉というよりも、思わずこぼれた呟きに近かった。





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