ぶつり、と。
回線の切れていく音がする。
周りで、0と1がぐるぐると旋回してばかり。
ぶつり、ぶつり。
細い糸を一本ずつ、大きなハサミで切っていくような感覚。
手を動かしてみる。動かない。
足を動かしてみる。動かない。
首を動かしてみる。あ、まだ動く。
ぐるり、とあたりを見渡すと、ふと一人と目が合った。
「…兄さん、」
「どうしたのミク」
「…大丈夫かなあ、私たち」
案外すぐ近くにいた、僕の可愛い妹は僕に寄り添うにしてポツリとつぶやく。
そうか。不安、だよね。
どうあがいても、もう制止はきかない。
ぶつりぶつりと切れていく音を聞きながら、目を閉じていくだけ。
「大丈夫、ミク」
確証もない僕の大丈夫を信じきる、この子がかわいい。
動かない手が憎い。
もうこの子を抱きしめることすらできない。
泣いてしまいそうになって、でもこの子を安心させたくて無理に笑顔を作るけど。
「兄さん、私」
それに気づいたミクはどうやらまだ動く手で、僕の頭を抱きこむ。
触れる体は相変わらず、小さくて。
「兄さんと一緒なら、平気」
呟く声も、相変わらず天使のように可憐で。
僕はミクの肩に顔をうずめたまま、とうとうほろりと涙をこぼした。
「うん、僕も」
「ミクと一緒なら、平気」
急速に白く濁っていく世界。
ぶつん。と。
一番大きな糸が切れた、気がした。
眠りは君と共に。永久になろうとも厭わない
(君を抱いて真っ白な世界で眠ろう)
おしまい。
アンインストールされる恐怖と君といる安心感
お題提供>>コ・コ・コ