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□限りなく自由な僕らは
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05限りなく自由な僕達はだからこそワガママさ


「ひばりさん」

遠慮がちにかけた俺のこえに」、ひばりさんはちらりと目線だけをよこして眉根を寄せた。
目線すら一瞬で、手元の書類に戻される。
(うう、傷付くなあ)
ちくちくする胸をサマーセーターの上から押さえて、俺はもう一度「ひばりさん」と呼ぶ。
けど。

「煩い」

一蹴された。
罵る声すら冷たくて凛としていて、それはそれで恰好いいんだけどってああもうそうじゃない俺のバカ!
とにかく俺は、今この時間でこの人の機嫌を直さなくてはいけないのだから。
そうでないと、害のない一般生徒にまで被害が及んでしまう。
ひばりさんの八つ当たりはすごいのだ。

「・・・」

昼休みに草壁さんに呼び出されて、何事かと思ったら委員長様のお守だった。
たいていひばりさんの機嫌が悪いのは、俺が一枚かんでいるのではないかと風紀委員会では噂されているらしい。
もっぱら迷惑な噂ではあるが、実際そのとおりなのだからしかたないのか、もしれない。だけど理由もわからず連れてこられるのは初めてだ。

「用がないなら教室に帰りなよ」

確認し終わったのか、報告書をばさりと投げ捨てるひばりさん。
ここからが正念場なのです。

「ひ、ばりさん。あのですね」
「あっそ」
「まだ何も言ってないです!」

ずぶずぶとソファに沈み込むひばりさんの目の前に走り寄って、聞いてくださいとお願い。
多分こんなこと、他の誰かがしたらすぐにあのトンファーの餌食だ。
いや別に俺だから特別ってわけじゃないんだろう。俺は、そう。リボーンと関係があるからあまり手酷くされないだけだ。
そういうちょっとした気遣いじみたことですら、俺の弱い頭は『特別扱いなのかも』と浮かれてしまうけど。

「・・・眠いんだ。早くして」

沈み込む身体はとうとうソファと平行に。
そういう格好を俺がすると、「だらしない」って怒るくせに!

「ええと・・・。じゃあどうしたら、機嫌直してくれますか?」

しまった。あまりにも直球すぎた。
言葉の配慮が足りない、とよく言われる俺ならではのミス。
いくらマフィアのボス(ならないけどさ!)としての素質が磨かれてきたところで、14年間培ってきたダメツナ精神は早々改善されるもんじゃない、らしい。
怒ってないだろうか。さらに機嫌を損ねてたりしたら、いくら俺でも修復しようがない。
ちらり。
上目でひばりさんを見ると、案の定呆れたような、馬鹿を見る目で見てる。

「・・・君は何と言うか本当に、本能的なんだね」
「すいません・・・」

軽く涙目で、俺も自分のダメさを呪う。
ひばりさんは少し考え込むような仕草を見せたあと、

「君が僕のわがままをきいてくれるなら」

と呟いた。

なら、なんだろう。
そう思ったが、先ほどの俺の問いに答えてくれたのだ、と今度は余計な事を言う前にきちんと理解する。
わがままを聞いたら?
おれが、ひばりさんの?
・・・いつも聞いてるじゃないですか。

そんな不満は、ぐっと呑み込む。

「しばらくは君の周りも落ち着くだろう?」

それは、リングやら10年後異世界やらのことが一段落したかってことだよね?
そうですね、と曖昧な相槌を打つと、ひばりさんはそれならとまぶたを閉じた。

「ようやく君と、二人きりで過ごせる日常が戻ってくるわけだ」
「・・・! え?あの、もしかしてひばりさん」

ものすごく都合のいい夢を見ているみたいだ。
つまり、ひばりさんは最近立て続けに俺の周りが騒がしかったから、二人きりで過ごせなくて拗ねていた、ってことで。
だから、俺が機嫌を取りに来るのを知っていて、ずっと拗ねてたわけで。
わがままは、俺と一緒にいたいだけってこと!?

強張っていた体がふにゃんと柔らかくなるのを感じる。
同時に、愛しさとかかわいさとか、もうどうしようもないくらいあふれてきて。


「もちろんですひばりさん死が二人を別つまでずっと二人でいましょうね!!」
「なんでそういう意味にとったのか是非とも聞きたいね」


ソファで寝そべるひばりさんの上に、俺はどさりと全体重を預けたのだった。

(重たいよ、と呟く声すら嬉しそうに聞こえた俺は本当にこの人が好きなんだろう)

許されるならずっと、わがままの許される自由な世界にいたい。



おしまい。


ひばつな。10年後から帰ってきたよ!設定。
久しぶりにひばつな書いたら、ほんと頭のねじが緩い話しかかけないことがわかった。もういっそのことつなひばにしてやろうか。

お題提供>>コ・コ・コ

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