これ以上を望むなんて馬鹿げていると自分でも思っているよ。
「さすけー」
「うわまた来た」
放課後の教室。
普通誰もいないと分かっているなら来ないけれど、この人は別だ。
というか、来るのを分かってるから、俺もここにいる。確信犯なの、俺は。
「ひどいそんなこといわないでよ」
「はいはい、で?今日は何」
「また振られた―」
まあ、予想していたというか案の定、俺の親戚にこっぴどく振られた、らしい。
そんなにやられてそれでも好きだってんだ。
相当物好きだ。こいつは。
ああ、俺様もか。
いつか諦めて、傍でこんないい男がずっと待っていたことに気付かないかと淡い期待しているのだから。
「旦那のあれはー、照れ隠しじゃないの」
「照れ隠しで普通剣道の防具袋振り回してくるか」
「旦那だし」
淡々と返してやる。
どうでもいいわけじゃない。ただ実らなければいいなあと思ってるだけだ。
そんな思惑に気付かない彼は、ここたんこぶ出来たんだけど!と俺に頭頂部まで見せてくる始末。
いや別に頭頂部フェチじゃないから。そんなところにむらむらしないけど。
指差す場所を、くしゃりとなでると案外柔らかい猫毛が手にまとわりつく。
うわ、かーわいい。
「いた、佐助、痛い」
「あ、ごめん」
どうやら気付かずに思いきりなでまわしていたようだ。
痛かったよと苦笑いで見上げてくる彼に、どきりとした心臓を抑えつける。
「幸村もこれくらい優しかったらな」
さっきとは違う意味で心臓がまた跳ね上がる。
ばかだね。
俺は別に、優しくなんてないよ。
ただ。
ただあんたが好きだから。
(一直線で優しいアンタはきっと気付かないんだろうけど)
「もしかしたら、校門で待ってんじゃない?ほら」
顎で校門のほうを指すと、確かにあのシルエットは俺の親戚のものだった。
きょろきょろと見回しては、また自分の靴先を見てる。
誰か待っているのは明白だ。
「え・・・っ、あ、ほんとだ!佐助、ごめん俺行くね!!」
「んー」
健闘を祈る、なんちゃって。
当たって砕けてきてほしいのが本音。言わないけど。
あの人が慌ただしく出て行った教室のドアをじっと見つめて、馬鹿らしくなって帰ろうと席を立った瞬間。
がらり。
もう一度顔を出したのは、校門へ行ったはずの彼。
「・・・なに?」
「いや、俺ね、佐助が友達でよかった!と思って」
「・・・・・・・・」
「? 佐助?」
不意打ち。
ひどい、なあ。
そんな笑顔で。俺の好きな笑顔で。
残酷だ。
「次から相談料5000円で」
「たっか!!!」
「じょーだん。早く行きなよ。旦那待ってる」
「あ、うん。じゃあな!」
がらがら、ぴしゃん。
帰ろうと思ってた足は、もう一度椅子に沈んだ。
最悪だ。
はっきりと、してしまった。
「逆に笑えるっつーの・・・・」
友達、か。
友達でよかった、ね。
対象外、ってこと。
馬鹿みたいだ、本当に。
「いい友達」「ずっと友達」、残酷すぎて笑える
(涙も出やしない)
おしまい
佐助→慶次の慶次はあらゆる方面に鈍感だといいなあ
お題拝借>>確かに恋だった