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□酒は飲んでも飲まれるな
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酔っぱらいは相手にするな。
俺はその日、そう学んだ。
学ぶというのは、俺にしてみれば結構殊勝な心がけだ。なあ、そう思うだろう?
3.「俺、いま死んだかも」「いや、立派に生きてるよ」
「うう…」
とにかくこの日、たぶんこいつは怒ってたのか、悩んでたのか、怒ってたのか、怒ってたのか、怒ってたんだろう。とどのつまり、怒ってたわけだ。
何に、かは知らない。
自軍の兵のだらしなさか、いつものように俺への嫌味か、なかなか美味くない酒にか。
それでも一瓶全部空けたこいつに、俺は少し嫌な予感がした。
これまでの酒盛りの戦績からして、こいつは酒にあんまり強くない、はずだ。
というよりちまちま飲むのが好きなやつで、いつもはこいつが二杯ほど飲み終わった頃、俺が三つ目の瓶を空けているころなのだ。
それを今日は。
「一人で一本空けやがった…」
おいおい、まじかよ。
呟くようにごち、本当に空かと瓶を逆さにしても、多少のおこぼれがぴちょんと落ちてくるだけ。
ああこれは。
どうやら、嫌な予感は杞憂ではないらしい。
「ちょ〜うそ〜か〜べ〜…」
いつもの何倍も低い、ドスのきいた声に俺は心中で涙を流す。
振り返ってみれば、ゆらりと起き上ったこいつの据わった眼が俺を見ている。
ああ。
爆発、する。
「ちょうそかべ!」
そいつは、がばあっと半ば襲いかかるように両手を広げてー
ちゅう。
…あれ?
「ちょーそかべぇー」
…んん?
おかしい。
いつもは殴る蹴る罵るの(竹中も真っ青な、)女王様プレイがない。
それどころか、今、こいつは。
「どうしたぁーちょうそかべー」
俺の頬に、接吻しましたけれど。
そして、そのまま俺の腕で猫みたいに喉を鳴らしてるのですが。
だれか悪い夢だと言ってくれ。(この場に俺とこいつしかいないのは百も承知だが)
そんな俺の心の叫びに気づくこともなく、こいつはんんーと唸ってもう一度俺の頬にちゅう、と可愛らしく接吻をお見舞い。
…この酔っ払い。
「…はあー…」
さてどうしてくれようか。
おしまい。
せりふはあれです(何)『こんなことになってうれしいけど信じられない俺今死んでるのかな!?』『いやこれは現実だ君は立派に生きてるよ!』な、アニキの心の声のセリフなわけです。
でろんでろんに酔っ払った毛利さんは案の定二日酔いです。アニキはその日からあまり毛利さんに酒を与えなくなりました。ちゃんちゃん。
お題拝借>>ラルゴポット