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□きっと、気のせい
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くらり、とする。
頼りない行灯の灯が、どこからか吹く風に揺れた。

(流され、そう)

燃えるような赤色の髪を無造作に散らして、彼はそう思った。

『無防備なんだね』

そう云って押し倒されたのはついさっき。
何がと問う暇もなく(あったとしても声は出せないから意味がない)、閉鎖されたこの空間に閉じ込められた。

そうして、言葉もないままにしゅるりと忍び装束の衣擦れだけが部屋にこだまする。

(ゆびが、触れてる)

どうしよう。
彼はとっさにそう思う。
流されてしまいそうと今思った。
だけどそれでいいのだろうか。
これは、ひどくいけない行為ではないのだろうか。

かすかに映る赤茶をそっと見つめると、視線に気づいたのかそれはにこりとした。

「…怖い?いや?」

ふるり。
彼は半ば無意識に首を横に振る。
頭では、いけないことなのかもしれないとわかってはいるのに。
にこりとしたままの それ が放つ言葉は、あまりにも切なさを帯びすぎていたのだ。

(どうしてきみが、泣きそうなの)

ぱさり、と。
彼の着ていた忍び装束が畳に舞った。
外からでは分からない傷があらわになると、それ は愛しそうに指で傷をなぞった。
くすぐったさに身を捩ると、逃げちゃダメと笑われる。
なぞる指はやまない。
と、臍のあたりに辿りついた指の代わりに温かなものがそこへ押しつけられる。
何かと彼が頭を起こすと、薄い唇が吸いついていた。

(わあ)

羞恥で紅くなった頬に彼が気付くはずはないが、それでも身体はその唇から逃れようとする。

「逃げちゃダメ、だってば」

低く掠れた、甘い声。
まだ切なさを含んだ、甘い声。
術をかけられたように、彼から力が抜けていく。

(う、わぁ)

抵抗できないことを悟ると、今度はどうにかしてそれを見ないように腕で顔を覆い隠す。
視覚がなくなると、聴覚と触覚が鋭くなる。
大体にして、彼は常人とは違い五感の全てが発達しているから、ちゅ、と云って腹部をたどる唇や、立てた膝を愛しそうになでる指の感覚を全て感じ取ってしまって、また羞恥に頬を染めた。

「…かわいいね、こたろう」

やっと唇を離してくれたそれが、楽しそうにおもしろそうに彼の名を呼ぶ。
答えられない彼は、知らず潤んだ瞳と荒くなった息を飲むばかり。

(かわいくない。はずかしい)

ちらちらと揺れる灯の中で、彼は睨みつけようと目を細めるが、それが届いたかわからない。
赤茶色はまだ笑っている。

「ね、小太郎。…」

(え?なに?)

聞き取れなかった言葉を聞こうと、彼が手を伸ばしかけたとき。

(…っ!!?)

びりりとした感覚に襲われる。
先ほどまでの子供のような触れ合いは鳴りをひそめて、今度は確かに。
彼を抱こうとする、触れかただった。

「抵抗しないの、嫌じゃないの」

顔をそむけた彼の耳元に呪詛でも吹きこむかのような声で、赤茶色の髪をしたそれは抵抗できないよう、彼の腕を頭上でひとまとめにした。

(しないんじゃないよ)

そもそも、させてくれる気もないのだろう。
一体いつから、目の前にいる赤茶色の術中だったのだろうか。
初めて会ったときは、まだこちらが優勢だったはずなのに、とぼんやり彼は思う。

「小太郎…。俺の、 俺様だけの、ものでいて」

(…したくないんだ)

見つめられる瞳を見つめ返すと、切ない吐息の洩れる唇を甘くふさがれた。
もし、この人以外だったら嫌になったりするのだろうかと余裕のなくなる頭で彼は考える。
それともこの一夜も、ただの気まぐれで終わるのだろうか。

彼のとりとめのない思想は、そこで泡のようにはじけて消えた。




きっと、意識が朦朧とする所為
(抵抗したくないのも気まぐれだと思うと胸が苦しいのも。)


おしまい。


びえろいさすこた。小太郎は純朴で純粋で乙女で童貞(てめえwww)ある意味ヤンデル佐助←
久しぶりに書いたさすこたがこれかよwww



お題提供>>確かに恋だった

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