ショートショート
□その感情は名は
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一本の電話が鳴った。
着信は彼からだった。
「もしもし?」
彼が電話をかけてくるときは、
お金に関するときか彼の欲求がたまったときだけだった。
「なぁ、今日会えない?俺暇なんだけどさーお前の家行っていい?」
結局彼の用事は欲求のほうだった・・・。
何人も彼にひどい目にあった女の子を知っているから、深入りして傷つきたくないという感情があった。
必死に深入りしないように心がけてはいたのだけれど、いつの間にか心の中には彼が住んでいた。
いいように使われているのはわかっているけれど、
「自分だけは違う」
いつの間にか心のどこかで思っていた。
電話を切ると部屋を片付け、急いでシャワーを浴びた。
その行動は、彼が来るのを待ち望んでいるかのようだった。
きっとこれは世間では恋と呼ぶに違いない。
しかし私は恋と呼びたくない。
そうしたらこの感情は何と呼べばいいのだろう・・・。
恋と呼べないこの感情を・・・。
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