ショートショート

□その感情は名は
1ページ/1ページ

一本の電話が鳴った。
着信は彼からだった。

「もしもし?」

彼が電話をかけてくるときは、
お金に関するときか彼の欲求がたまったときだけだった。

「なぁ、今日会えない?俺暇なんだけどさーお前の家行っていい?」

結局彼の用事は欲求のほうだった・・・。

何人も彼にひどい目にあった女の子を知っているから、深入りして傷つきたくないという感情があった。

必死に深入りしないように心がけてはいたのだけれど、いつの間にか心の中には彼が住んでいた。

いいように使われているのはわかっているけれど、

「自分だけは違う」

いつの間にか心のどこかで思っていた。


電話を切ると部屋を片付け、急いでシャワーを浴びた。

その行動は、彼が来るのを待ち望んでいるかのようだった。


きっとこれは世間では恋と呼ぶに違いない。
しかし私は恋と呼びたくない。
そうしたらこの感情は何と呼べばいいのだろう・・・。

恋と呼べないこの感情を・・・。


[次パブロフの犬へ]
[ショートショートへ戻る]
[表紙へ戻る]

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ