ショートショート

□Last Letter
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優しくしてくれてありがとう。
微笑んでくれてありがとう。
抱き締めてくれてありがとう。
そして愛してくれてありがとう。


貴方と出会う事がなければ人と愛し合う事がこんなに素晴らしいなんて知らないままでした。


出逢ったあの頃は、寂しさを紛らわせる為だけに貴方のそばにいたなんてきっと気付いてたよね。

誰かを愛し愛されるなんてそんな夢物語は全く信じていなかった。


一度傷ついた心は人を信じる事を恐れ、再び誰かと愛し合うなんて出来なかった。
そんな自分を貴方は真綿を包み込むようにずっと傍にいてくれたよね。


初めて交わした口付けは貴方の代名詞とも言える煙草の香りがいつまでも鼻腔をくすぐっていたのを今でも覚えています。
会えない日々はその香りを思い出して自分を慰めたりもしてました。


いつの頃からか自分ではない誰かの元へ帰ろうとしている貴方を黙って見送るのは辛かった。
何度その背に縋ってしまおうと思った事か・・・。

近い未来二人手を取り合って幸せになるなんて叶わない夢を見て毎日過ごした。

ずっと傍ににいて欲しい。
ずっと自分だけを見て欲しい。
そんな我侭を言える立場ではないけれど、貴方を愛するが故に言ってしまいそうだった。
貴方なしでは生きているのが辛くなっていた。

そんな不安をだまって取り除いてくれてた貴方だから・・・。

いつの日か再び巡り逢って愛し合えると信じているのでさよならは言いません。


この愛は辛いことが多かったけど、それ以上に幸せな日々を過ごす事が出来ました。
貴方との思い出が確かに心の中に残っているから・・・。
これ以上増える事はないけれど、自分にとっては唯一の大切な宝物です。


もし一人で笑う事が出来なくなってしまったなら・・・。
もし一人で泣く事すら出来なくなってしまったなら・・・。

幸せだったあの頃を思い出すだけで頑張っていられる・・・。


願わくばこの手紙が貴方の目に触れる事がない事を祈ってます。
自分の事なんか忘れて幸せになってくれていると・・・。


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