短編集

□フリー配布小説
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「そうかぁ?」
レクテルが猜疑の含有された視線で問うと、返すルナはあっさりと頷いてしまう。
じとりとした湿度の高い視線を受けようとも、ルナは笑んで返すだけであった。それどころか、腰よりも長い金糸の、癖とは無縁の翡翆の髪状(かんざし)をさらりと揺らしながら、先程子供達に振る舞ったココアを入れたカップを片付けていた繊手を休め、莞然してしまったのだった。

まぁルナが首肯するのももっともであり、レクテルに自覚がなくとも、彼は一緒になって大分はしゃいでいたのだ。
少なくとも、ルナのその碧眼たる明眼には、そう映っていたのだから、ルナが頷くのは仕方のない事であるのだった。
まぁ、そうそう体力が削れるはずもない非人間であり、肩などこるわけないにも関わらず回している状態なのだ、それは本当に仕方ない事なのだろう。
だがそれを悟ったからといっても、どうも腑に落ちない。
しばし黙考したレクテルは、態と顔をしかめて見せたのだった。
畢境(ひっきょう)はまだ子供であるのだが、それを悟れないのが〃人〃という性分であるのだろう。
わかる様でわからない漠然とする感覚は、いつまでも輪郭を見せる事などなく、いつまでもくすぶっているモノなのだから。
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