短編集

□フリー配布小説
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秋風〃ラウィン〃が吹き、六十日が過ぎた今日という日は、ハロウィンである。誰が始めた祭かは定かではないが、仮装をした子供が合言葉と共に家々に押し掛け、お菓子を貰うといった、子供にとっては一大イベントのお祭り、大人にとっては出費の重む日の事だ。五つの小さな影達も、その当事者かつ得者の方である。
先程ここ、療養所兼ルナ宅に押し掛けてきた、笑顔の小悪魔達だ。
目的を終え、しばしレクテルやルナとの戯れを楽しんだ彼らは、個々の籠いっぱいに貯まったお菓子の上に、渡したカボチャマフィン(ハロウィン仕様でありレクテル作)を乗せ、送り出したレクテルへと、喜色満面で手を振っていたのだった。


「あ〜〜、つっかれたぁ。最近の子供は手加減にゃーな、体力消費が半端にゃーわ……」
などと、子供達が居ないのをいい事に軽い文句を吐くレクテル。
「俺っちが年寄りってわからにゃーのかなぁ」
とも冗談めかして加える。「フフッ、そのわりには楽しんでいたじゃない、レクテルお兄ちゃん♪」
それに返す鏘然の如き声は、魔医療員のルナだ。
比類なき絶世の美女とも敵わぬ、美の権化を過言としない白(はく)いの容貌の彼女だが、どこか幼い子供じみた目をして言ってくる。
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