だいすきな君に。

□04.少しの違和感
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今日は対美丞大狭山戦。
集合場所(試合会場)へ向かいながら由妃と勇人は話をする。


「いよいよだねー。」

「うん?」


いよいよ、というのは試合のことだろう。
だが急にどうしたのだろうと勇人は隣にいる由妃を見る。
すると彼女の表情はごく真剣なものであった。


「…しょーちゃんが西浦のこと注目してるって言ってた。」

「ああ、そういえば言ってたね。」


ついこの前試合会場で久々に会ったシニア時代の仲間。
しょうちゃんは確かに西浦のことを注目している、と言っていた。
由妃はまだ真剣な表情のままである。


「きっと、ううん絶対西浦は研究されてる。」

「──へ、」

「だってウチは桐青を倒したダークホースだよ!しかもここまでの成績は割といいもん。絶対研究されてる。だから、」


由妃は手をギュッと握りしめる。
それを見て勇人は柔らかく微笑む。


「由妃、研究されてようがされてまいがオレらのすることはいつもと一緒だよ。」

「……?」


勇人の言葉に由妃は視線を向ける。


「守る、打つ、走る。それで点を取る。──ほらいつもと一緒だろ?それに研究されてるなら研究し返せばいいって由妃が言ってたじゃないか。それとも由妃は自分を信じてないの?」


ニッと笑って言う勇人に由妃は一瞬固まる。
そして次の瞬間にかっと笑う。

   
「まさかそんなわけないでしょ!!私は私を信じてるしみんなのことも信じてる!」

「だよね。」

「もち!!」


キッと前を向いて言う由妃に勇人は微笑む。


「よかった。」

「…何が。」

「由妃にそんなピリピリした不安そうな顔でベンチに座られてたらみんなも不安になるだろ。西浦のムードメーカー。」

「──へへへっ!任せてよっ!!」

「その調子でよろしくね。」

「うん!ゆーともがんばろーね!!打撃面で研究されてないの多分ゆーとだし!」


ぐっと手を上に向ける由妃に勇人は微笑む。
その横顔を見て由妃は少し悔しくてむっとしながらも、ついにへらと笑うのだった。
そしてニヤリと笑う。


「いっちょホームランぶっぱなしてやって!」

「ちょ、それは…。」


顔を青ざめる勇人に由妃は笑うのだった。






04.少しの違和感




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