だいすきな君に。
□03.最強マネージャー
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由妃はワクワクしながら百枝の後をついていく。
フェンス越しにグラウンドを覗いているのは間違いなく、今日来ると言っていた記者だろう。
ウキウキしてスキップしてしまいそうだ。
何て言ったって西浦が取材を受けるなんて本当にすごいことだ。
「──こんにちは?」
百枝が挨拶するのを聞いて由妃も続く。
「こんにちは!!」
その声に驚いたのか記者の人達はびくりとして振り返った。
「こっ、こんにちは!私お電話させていただいた埼京スポーツの清水と申します!こっちはカメラの正木です!」
「どーもー。」
やはり彼女たちは取材の人達であった。
それにすでに由妃はワクワクしつつも百枝の横で二人を見つめる。
百枝はキャップを取り、にこりと微笑む。
「監督の百枝です!よろしくお願いします!あ、こっちは、」
「マネージャーの仲川ですっ!百枝さん!私練習に戻ります!!」
「うん!浜田くんが今やってるからチェンジしてあげて!よろしくね由妃ちゃん!」
「はーい!」
由妃は力強く頷くと埼京スポーツの二人にぺこりと頭を下げてから走ってグラウンドに向かう。
「はーまーだー!!交代だよ!」
「おー!ちょうどコレで西広ラストだから待ってくれ。」
「うん!準備運動してる!」
浜田の後ろで由妃は屈伸をし、腕をぐるぐると回す。
取材がきているだけあって由妃のテンションは未だウナギ登りだ。
その様子を青ざめてみていたのは西広の後ろに並んでいた水谷、巣山である。
「えー!浜田仲川と変わんの!?」
つい漏らしたその言葉は、由妃に丸聞こえである。
由妃は目をキッと釣り上げた。
「ちょっと水谷!今の何!どーゆう意味!?」
「げ、あ、あー!何でもないって!なっ、巣山!」
「おい、オレにふるな!」
ぎゃいぎゃいとやり取りする水谷と巣山に由妃は不穏なものを感じ取り、頬をむすーっと膨らませた。
その様子を間近で見て聞いていたのは浜田。
ラスト一本を片手に冷や汗を流す。
(あー水谷はバカだな…。思ったことすぐ口にするからな。仲川は異常に目も耳もいいんだから心ン中でしゃべればいいのにな。)
そんな事を思っていれば、後ろにいた由妃がガシリと浜田の肩をつかむ。
浜田はゆっくり振り返る。
「……何だよ仲川。」
「いや、なんか失礼な事考えてなかった?」
「ないないない。よーし!西広ラストー!」
浜田は後ろから注がれる視線に気づかないフリをして正面を見据えるのだった。
そしてその後、水谷と巣山(主に水谷)がシメられるのは分かりきったことだった。
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