だいすきな君に。

□01.実はいい奴
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ざっくざっく。


ざっくざっく。


「…………。」


ざっくざっく。


「………。」


…………………。


由妃は汗をぬぐい、鎌を持ったまま立ち上がる。


「だ――――!!もう我慢できないっ!」


「わっ!び、びっくりしたぁ!由妃…どうしたの?」


由妃は軍手を脱ぎ捨て、言い放つ。


「もう我慢できない!!私っ、百枝さんのところ行ってくる!!」


「…由妃?」


「ふふふふふ。まぁ任せてよ千代!」


それだけ言うと由妃は駆けていき、一瞬で姿が見えなくなった。


それを千代はポカーンとしながら見るのだった。





















「はいっ!みんな集まってー!!ドリンク飲みながらでいいから!」


「ん?仲川?」


「なんだ?」


「なになにー?」


休憩中に由妃が声をかけると、みんな集まってくる。


由妃は嬉しそうににんまり笑っている。

それに嫌な予感を感じた人数名。

由妃はにんまりと微笑むとドサリと軍手、ゴミ袋を置く



「――今から一時間!みんなでグラウンドの草むしりをしてもらいますっ!!」


「「え―――――っ!!」」


文句が出るのは分かっていた。

不満そうに叫んだのは田島と水谷である。
(「なんでー!れんしゅーしよーぜー!」「暑いじゃん!」と叫んでいる。)

しかし由妃はにっこりしながら口を開く。


「何か文句でも?」


「「なんでもないです。」」


その一瞬でしゅんとする田島と水谷。

その様子を見て部員達は深くため息をついた。


(ああ…。)


(やっぱり撃沈か…。)


(まず仲川に適うわけがない。)


由妃はにっこりしながら説明を始める。


「なんで急に草むしりって言うかもしれないけど!私たちマネジは草むしりは死ぬほどやってます!!」


千代の肩をつかみ、一人うんうんと頷く由妃。


「大雨が降ったあとに大量の雑草!台風のあとに大量の雑草!!太陽にギンギン照らされて!!田島がくれたどでかい麦わら帽かぶって!!――なぜ私たちだけ死ぬほど草むしりをしないといけないのか!草むしりはみんなでやるものではないのか!むしろグラウンド主に使
ってるのはみんなだよ!!……と思うわけです!!」


拳を握りしめて言う由妃は部員達を静かにさせる。


(演説…?)

(てか力強い…。)

(確かに草むしりのあと由妃と篠岡顔真っ赤で帰ってくるな…。)

(やべえ、かなり本気だ。)

(仲川さん、たちっ!いつも、大変そう…っ!)

(あーこれは断れない…。)

(しのーか笑ってるぞ。)


各々いろいろなことを考えながらもしんとする。

由妃はキランと目を光らせ、続ける。


「だから今日はみんなにもやってもらいます!名付けて“死ぬほど暑い中で草むしりやっちゃおうぜ!みんなでやればすぐ終わる”!!」


「「「……………。」」」


微妙なネーミングに黙り込む部員達。

そんな彼らに気づかず由妃はうんうんと頷く。

そんな中、田島が手を挙げる。


「はい!」


「はい田島くん!!」


「モモカンはオッケーだしたのか!?」


そのセリフに彼らは頷く。

休憩後の練習時間に草むしり。

百枝の断りもなくできるものではないだろう。


しかし由妃はそれを聞いてにんまりと笑
う。


「もちろん百枝さんにも許可は貰ってます!ばっちりオッケー!“自分たちの使うものは自分たちで整備するのも大切だよね!”だそうです!」


その言葉に部員達は諦める。

由妃は満足そうに明るく言い放つ。


「よし!てゆうわけで10分後グラウンド集合!みんな鎌と軍手持ってきてね!!」


「「「うーす。」」」


「♪」


テンション低めの部員達とゴキゲンな由妃。

不思議な空間がそこにでき上がっているのだった。




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