そばにいてくれる君へ。
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ガチャ。
「――!」
「仲川、“来てあげた”よ。」
屋上のドアを開けやって来たのは“あの時”の人達。
由妃はいつの間にか握りしめていた手をそっと開く。
そして息を吐き、静かに吸った。
「―――わざわざ、ありがとうございます。先輩。」
彼女達の空気は今もまだ変わっていない。
由妃を見る視線は冷たく、まるでたまたま出会ってしまったかのように「なぜこんな所で出くわさないといけないの」という表情が見てとれる。
ドクリと波打つ心臓に「落ち着け」と言い放ち、彼女達の姿をしっかり見る。
「カナ先輩、お久しぶりです!」
他校生であるカナに由妃は挨拶をする。
しかしカナは特別反応するわけでもなく「本当うるさい。」と呟く。
それが聞こえてきたのは知らないふりをして由妃は他の先輩にも視線を向けた。
「ユカ先輩も、ミズサ先輩もわざわざ夏期講習のあとなのにすみません!ありがとうございます!」
由妃が挨拶をしても彼女達に反応は見られず、むしろ睨まれる。
ユカが口を開いた。
「てかさ、仲川あんた何のつもり?」
「…何の?」
「先輩をこんな所に呼びつけるなんて、随分いい度胸だよね。」
「え、でも場所指定は私じゃないスよ。」
「うるさいなあ、そんなのどっちでもいいの!!」
(…そっちが言い出したのに。)
心の中で突っ込みながらも、由妃は口を開く。
「今日、来てもらったのはキチンと整理しようと思ったからです。」
「なにを整理するわけ?」
すかさず返される冷たいトーンの声に由妃はビクリとしながらも笑みを貼り付ける。
「あの時は、話、できませんでしたから!」
由妃は、笑顔のままで言った。
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