そばにいてくれる君へ。

□27.そしてそれは起こった
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それは、私が想像していなかったことだった。





今まで色々な人に出会ってきたけど話せば分かり合えたし、仲良くなれた。


今はまだ分かってもらえなくてもいずれ分かってくれる。


正々堂々闘えばきっと大丈夫。


そう思っていたんだ。
















「おい、お前ら2人ちょっと来い。」


監督に呼び止められ、由妃とミズサ先輩が立ち止まる。


監督は口を開いた。


「ピッチャーだけどな、今回は…仲川をレギュラーで使う。ミズサは控えだ。」


「え、」


「!!な、なんでですか!?」


由妃は目を見開く。

先輩がしっかり練習に参加したらレギュラーは先輩だろうと思っていたのだ。


もちろんミズサ先輩も納得がいなかないようで監督に詰め寄ると監督はポリポリと頭を掻く。


「ミズサ、お前も分かってるだろ?仲川のピッチング能力。」


「―っ、」


「だが3年最後の公式戦だ。メインは仲川だけどミズサも出番を多くつくる。な?」


「――――わかり、ました。」


「仲川も、分かったか?」


「は、はいっ。」



監督が教官室に帰っていくとしん、と気まずい雰囲気が流れる。


先に口を開いたのは由妃だった。


「先輩、あの、私ちゃんとやります!それで、先輩につなぎますから!」


「…………。」


ミズサは何も返さずグラウンドに歩いて行ってしまう。


そんな彼女に由妃は強く言った。


「絶対、勝ちましょうね!!」


その声はしっかり彼女に届いているとは思うが、今これ以上かける言葉は思いつかなかった。


先輩にも出番は多くつくると監督は言ったが、実際どうなるかは分からない。


由妃はキャップを深く被りグラウンドに走って行くのだった。
















「―あ!由妃っ、監督なんの話だったの?」


戻ってきた由妃に気づき千代が尋ねる。


由妃はにへらとして返す。



「あ―、レギュラー、私だって。」


「「え!!?」」


重なった声に首を傾げると由妃の背後に南先輩の姿が。


千代と同じく驚愕したようで口をあんぐりとさせている。


それを見て由妃は笑う。


「先輩変な顔っ!」


「うるさい!それよりホントなの!?」


「あ―、そうみたいっすね!」


「他人事か!」


「あははっ、まぁ、先輩の言うことは分かりますけど。」


そこまで言うと由妃はニカッと笑う。


「大丈夫ですよ!試合の前までに先輩に分かってもらえるようにしますから!」


「―…〜仲川あんたねっ!あ゛―もうっ、仲川がそう言うと大丈夫な気がしちゃうのが怖いわ私!!」


う゛―っ!と頭を抱えて唸る南先輩に由妃は笑う。


千代も苦笑いをして南先輩を見た。







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