そばにいてくれる君へ。
□25.楽しい毎日
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「由妃ー打てーっ!!」
「由妃ーっ!!」
試合終盤、ランナーが2塁3塁。
2アウト。
現時点で由妃達は負けていた。
由妃が打てば勝ち、アウトならばゲームセットだ。
応援の声が飛び交う中、相手のピッチャーが振りかぶる。
由妃はバットを握りしめ、スイングするー。
カキーン!!
ボールが当たる音がして、わっと歓声が響く。
由妃は飛んでいくボールを見て、手をぐっと握り高く掲げた。
由妃は満面の笑みでダイヤモンドを回る。
「おー、飛んだなー。」
「初勝利だ!」
「うおおぉぉ!!ナイスだ由妃ーっ!」
「由妃ナイスー!」
「さすがだなー、由妃ちゃん。」
冷静にボールを目で追う龍一に嬉しそうに微笑む勇人。
その隣では子ども達の倍うるさい両親達。
勇人は由妃に叫ぶ。
「ナイバッチー!!」
その声に気づいたようで、由妃はこちらを見て一瞬顔をしかめたが(親たちの騒ぎが目に入ったのだろう。)ピースをして勇人に返した。
それを見て龍一は笑う。
「ははっ、由妃にゃ“プレッシャー”つう文字はねぇなー。」
「本当、由妃はすごいよ…。」
はぁ、とため息まじりの勇人に龍一はニヤニヤして言う。
「勇人もその方法を伝授してもらえよ。」
「…………。」
勇人はニヤニヤする龍一に不満そうな表情を見せる。
龍一はまた笑うと謝る。
「ははっ、ワリー。まぁあの局面でニヤッと笑ってバッターボックスに入れる奴は少ないって。」
「確かに…。由妃は異常だよ。」
そう言った瞬間、由妃はキッと勇人たちの方を睨む。
それに2人はびくりとすると顔を見合わせる。
「…オレ、時々由妃ってエスパーなんじゃねえのって思う。」
「…うん、オレも今思ったとこ。」
グラウンドにいる由妃はさっきまでこちらを睨んでいたのに、すでに勝利に盛り上がっている1年生の中心にいて、わいわいと騒いでいたのだった。
それに2人はため息をつくのだった。
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