そばにいてくれる君へ。
□22.その一歩が、
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由妃はごくりと息を呑んだ。
いつもの朝食、いつもの様子。
それを思い出そうと無言になる。
しかし響くのは食器の音やテレビの音のみ。
「ーごちそうさまでした。」
先に箸を置いたのは勇人。
今までならば、「早く食べないと遅刻するよ?」という言葉が由妃に放たれるのだが、今の状況ではそれはありえない。
(珍しく、ほんとに珍しく勇人も凄く怒っている。)
由妃も静かに箸を置いた。
「ごちそうさまでした!」
そしてガタっと立ち上がると台所で食器を片付けている勇人の方へ自分も食器を運ぶ。
「私も置く。」
そう言って勇人の隣に久しぶりに立ち、食器を置くと勇人はサッとその場を立った。
それにカチンとくる。
「ちゃんと食器洗いなよ!ゆい姉のやること増えるでしょー!!」
「由妃に言われたくない。いつも由妃が忘れてるだろ。」
「ー!!!」
しん、とする台所。
由妃がむう、とふくれたのを見てか見ていなかったかは分からないが、勇人は先にカバンを背負い立ち去った。
バタンと閉まる玄関。
「……………………いってきます!!」
閉まったドアが数秒後また開いて勢いよく閉まる。
2人がいなくなりしんとしたリビングに残された姉弟はため息をついた。
「ちょ、今のなに?」
「アニキこえーよ。由妃姉の方が折れそうな感じだよね。」
「あ、やっぱりそう思った?いつもは絶対勇人が謝るけどー…、今回勇人頑固だもんね。」
「あんな怒ってるアニキ見たことねーもん。」
2人は顔を見合わせまたため息をついた。
「「ほんと早く仲直りしてほしい…。」」
それは切実な思いだった。
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