そばにいてくれる君へ。

□13.心配かけたくない、だから言わない。
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バシャバシャ…ジャー!!


「はっ、しまった!!」


水の音にはっとして目の前のジャグを見ると、見事にジャグから水が溢れていた。


すりきりいっぱいに入ったジャグを見て由妃はため息をついた。


「由妃、どうしたの?珍しいね、ぼーっとしてるなんて。」


いつもテキパキ動いている由妃からは想像がつかない姿に千代は首を傾げた。


由妃はにへらと笑って溢れた水を適量まで流す。


「いや、あはは。なんでもないよ〜!ごめんっ!」


「…?」


ジャグのフタを閉めて笑いながら歩いていく由妃。

由妃は歩きながらため息をつく。


(ばか…。落ち着かないと、)


















「は?仲川?」


「マジで仲川だし。カナが言ってたのほんとだったんだ。」


「よりによって、西浦かよ。」


「…あんた、何でここにいるの?野球部のマネジやってんだって?」















「行こ。………仲川、うちらは忘れてないから。」


「!!」















由妃はギュッと目を瞑った。


「…っ。」


次の瞬間、目がくらんだ。
目の前がまっくらになる。
体のバランスがとれなくなり地面に手と膝をついてしまった。


由妃の持っていたジャグが地面にぶつかるー…。











ガシャン!!!


「由妃っ!?」


千代の声が遠く聞こえた。
今、足の痛みは最高潮に達していた。



















「由妃っ!?」


勇人は千代の声を聞いて振り返る。
隣りにいた水谷が声をあげる。


「わ、仲川!?」


「!!」


由妃が座り込んでいるのを見ると勇人は持っていたバットを置いて、素早く由妃の方に駆けていった。


「…栄口、かっこいー。」


水谷が呟く。それにみんな同意する。


「本当だ。ってそれどころじゃないって!」
















「由妃!!!」


「どうしよ、栄口くん、由妃がっ!」


「…っはっ、」


呼吸が乱れ、うまく息が吸えていない。

勇人は千代を見た。


「篠岡!なんか袋!」


「ふ、袋ねっ!!」


そう言うと千代はベンチに走っていった。




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