そばにいてくれる君へ。

□12.何か違う。
1ページ/3ページ










「忘れたわけじゃないよね?私は、私たちは、あんたのこと許さない。」















「……由妃!……由妃、ちょっと、由妃?」


名前を呼ばれていたことに気づき、由妃はハッとする。


「あ、ごめん心!なにっ?」


「どしたの由妃。」


心が不思議そうに由妃を見る。
由妃は笑った。


「あはは、昨日寝るの遅くてさ!」


「へぇ、珍しいね。いつもテンション高いのに。」


「私だって疲れるよー!!てなんだった?」


冒頭に呼ばれていたことを思いだし、尋ねると心はああ、と声を出す。


「全校集会だよ。由妃がボーっとしてる間にみんな行っちゃった。」


「ええ!なんでもっと早く教えてくれなかったの!」


「だって由妃呼んでも気づかないし。」


「…………。」


言い返す言葉が見つからず、由妃はにへらと笑ってごまかすのだった。
















「それにしても全校集会とかヤダよねー。せっかくの夏休みなのにわざわざ登校してさぁ。」


「だよね!!提出しないといけない宿題もあるし!」



「暑いし。」


「眠いし。」


そう言って2人は笑った。


「でも、どっちにしても私ら毎日学校には来てるもんねー。」


「うん!!毎日部活って楽しいよねっ!!全部の時間を部活に使えるなんてすごすぎるっ!」


キラキラする由妃に心は「ほんと部活すきだねー。」と呟く。


「あたり前じゃん!!」


ニコニコしながら言う由妃に心も微笑む。

しかし次の瞬間、心は時計を見て大声を出す。


「ああ!!」


「うわっ、なに!?」


驚いて心を見ると心は慌てて言った。


「大変!由妃、もうすぐ集会始まる!!」


「え!最初に点呼あるじゃん!!」


「走れ由妃!!!」


そう言うと心はすぐさま走り出してしまった。

由妃はすっかり出遅れてしまい、心の背中を眺めた。


「って心早!!置いてかないでよ!!」


慌てて追いかけて行こうとしたとき、由妃の立っていた横の教室の扉がガラリと開いた。


「は、仲川?」


聞き覚えのある声。

それを聞いた途端、走り出そうとした足を止めて振り返った。


「…っ!!」


その人達の姿を見て、由妃は固まった。


目の前にいる人達は、由妃を睨みつけていた。


「マジで仲川だし。カナが言ってたのほんとだったんだ。」


「よりによって、西浦かよ。」


「…あんた、何でここにいるの?野球部のマネジやってんだって?」


次々と繰り出される会話に、由妃は何も返せない。


ただ静かに時間が流れた。





「…やば、集会始まるよ。」


「行こ。………仲川、うちらは忘れてないから。」


「!!」







キーンコーンカーンコーン、



キーンコーンカーンコーン…。



チャイムが鳴り響く。
立ち去った彼女らの背中を見送り、由妃は深く息を吐いた。



ズキ、



ズキ。



「…よりによって西浦って、こっちのセリフ…。」


しゃがみこんで足を押さえる由妃の息は荒い。


「さい、あく。」


落ち着け。落ち着け。

由妃は誰もいないろう下で自分に言い聞かせた。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ