そばにいてくれる君へ。

□09.繋がり
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「いやー、今日は花井に功労賞をあげないとね!」


「…もうやめてくれ。」


出発待ちの電車に乗り、由妃がそう言うと花井が疲れたように答えた。
(勇人は苦笑いで見ている。)


「なんでさ!褒めてるんだから喜んでよっ!!今日の試合始めはヘロヘロで人に当たる花井くん!」


「…勘弁してくれ。三橋にはちゃんと謝ってるから。」


嫌みを交えて言うと花井が呟く。
それを聞いて由妃はにかっと笑う。


「あ、なーんだ!ちゃんと謝ったんならいいよ!!良かったー。」


(…良かったはオレのセリフだって。)


「謝ってなかったらもい一発ケリ入れてたよ!」


(マジ良かったー!仲川の一発はハンパねえんだよ!)


心の中で花井は心底ほっとした。


「え、花井、由妃にケリ入れられたの?」


勇人が驚いた表情で見る。


「花井が悪いもん!」


そう言って由妃は笑った。

花井はハハ、と笑い勇人を見ると由妃には聞こえないように声を小さくする。


「…ちょっと三橋に怒鳴っちまってよ、そしたら仲川に蹴られて説教された。」


「…由妃らしいね。」


「でも、仲川のケリで目ェ覚めたのはホントだからな。助かった。」


「うん、由妃のことだからがっつり言ったんだろうね。」


「…さすがだな、栄口。」


本当にがっつり、試合のことも三橋に対しての態度も言われた。


「やっぱり仲川はすげーな。」


「ははっ、由妃は人の観察が上手いから、ちょっとした変化も分かるんだよな。」


「なるほどな、…てか栄口もさすがだよ。」


「へ?何が。」


「仲川のことそんなに理解してんのは栄口くらいだろうな。…そんなに仲川のこと見てんだな。」


「ちょ、いやいや!なに言って、」


ニヤリと笑って言う花井。
それに由妃がくいつく。


「え!なになに!!楽しそうな話!」


「なんでもないから!」


「えー、絶対なんか楽しかったよね。」


「そんなことないよな!花井っ、」


じいっ、と疑いの眼差しで勇人を見る由妃に花井は笑う。



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