そばにいてくれる君へ。
□03.父の気持ち
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「…由妃…だよ、ね?」
「なにかな勇人くん。」
勇人は状況を見る。
にこやかな由妃の両親と、疲れきった表情の由妃。
それを楽しそうに見ている自分の父親。
答えない由妃のかわりに隆が答えた。
「さぁ勇人!次はお前の番だぞっ!!」
あのイキイキとした目から逃げたい。
勇人は心の底からそう思った。
事の始まりは、まず球技大会の後部活に行き、疲れた体を休めるために風呂に行った所から始まった。
由妃は母親・かおりに呼び止められた。
「由妃ー♪」
「?…なに?」
なんだかかおりのその笑みが不気味だ。
母親があんな顔をしている時はロクなことを考えていない。
そこに父親・隆がにっこり微笑んでぴらっと服を出してきた。
「由妃のために作りました!」
「…ありがとう?」
それだけか、と内心ほっとする。
(由妃の父はデザイナーだ。)
しかし、それは甘かった。
由妃はかおりに腕を引っ張られる。
「え、ちょ、なに!」
「由妃!着てみよう!」
「今!?それって今やること!?」
「そうよー!お母さんたのしみだったのよ!」
「そんなの知らないから!私ご飯食べたい!!」
そんな訴えは軽く流され、由妃は引きずられるように試着室たる部屋に連れて行かれた。
数分後、
「わぁ!由妃似合うよー!さすが父さんね♪」
由妃は着せかえ人形になっていた。
「はは。私お腹すいたんだけど。」
「んーじゃあ、これで決定ね♪お父さん!来て!!」
そう言った途端隆は部屋の中に入ってきた。
「ドアの前で待ってたのかよっ!」
由妃がそう言うと隆はにっこり笑う。
「父さん忘れられたかと思ったぞ?さびしかったー!」
「中年の親父が言うとキモイから!」
「さぁ由妃!父さんが髪型をセットするからな!」
「なぜ!?」
そう尋ねるがあっさりスルー。
由妃はもう抵抗するのもめんどくさいとばかりに諦めることにした。
「さぁできたぞ!」
「はぁ、どうも。」
やっと満足したようで由妃はほっとする。
両親は由妃を見て声をそろえる。
「「かっわいー!」」
「そらどうも。でもいつ着るのさ?」
由妃が最終的に着せられた服は、ちょっとしたパーティーに着ていけるようなもので、髪型までもがそのような感じに仕上げられていた。
高校生に、いつコレを着ればいいというのだろうか。
しかし両親はそんなことはどうでもいいらしく、すぱっと立ち上がる。
「さぁ、行くよ。」
「え、どこに?」
思わず聞き返す。
いい加減お腹がすいた。
両親はにっこり微笑んだ。
「「栄口家に行くよ!」」
「なんで!」
「見せたいじゃーん!」
「迷惑だろ!」
「まぁまぁ、落ち着いて由妃!ご飯はあっちで食べる約束してるから。」
「まじ迷惑じゃん!」
そう言う由妃の言葉はあっさりスルーされ、今現在栄口家にいる。
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