そばにいてくれる君へ。
□02.心を通わせる
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「やって来ました!試合観戦ー!!!」
球場についた途端両手を上げて大声を出した由妃に勇人は口を抑える。
周りに座っていた人がちらりと由妃を見る。
「由妃…もう少し静かにね。」
「何さ、いいじゃん!テンション上がるんだもん!!」
「…恥ずかしい奴。」
2人の後ろを通った阿部が小さく呟く。
由妃は聞き逃さず、キッと振り返る。
「阿部!!聞こえてるんだけどっ!!」
しかし阿部は鼻でハッと笑う。
由妃は再びムッとする。
「むかつく!!その見下したようなのやめなよ!」
「別に見下してねぇし。」
「その言い方が見下してんのっ!!」
「…あのケンカで更に注目を浴びてるのに気づいてないんだよな…。」
「阿部もやっぱ周り見えてないんじゃね?」
花井と水谷が呟く。
そこに百枝がやって来た。
「バックネット裏はいっぱいだね。三塁側の内野席で観ましょっか!」
「はいっ!三塁側ー♪千代、行こ!」
「うん。」
百枝の一声で由妃は小走りで去っていく。
阿部は取り残され、両手の手のひらをグッとにぎる。
花井がぽんと肩に手を置く。
「…気持ちは何となくわかるから。行こうぜ。」
「………………おう。」
阿部は由妃の楽しそうな後ろ姿を睨みつけているのだった。
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