そばにいてくれる君へ。

□31.特権
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「うしっ!!」


由妃は頬をぱんっと叩く。


「うしっ!」


深く息を吐く。


そして、キッと顔を上げた。


「やるぞっ!!」


そう言うと彼女は立ち上がった。
























「勇人ー、」


「なに?」


自転車をこぎながらいつもの道を走る。


突然由妃が名前を呼び、勇人は不思議そうな表情でそちらを見た。


由妃は前を見たままうん、と頷く。


「私っ、今日挑戦状叩きつけてくる!!」


「―――はいっ!!?」


キキッ、と自転車は止まり、そこから少し進んだ所で由妃も止まる。


そして少し後ろにいる勇人に振り返る。


勇人は呆れているような諦めた表情をしていた。


その姿に由妃はムッとする。


「――なにさ。」


その言葉を聞いて勇人はハッとしたのか勇人は再び自転車を漕ぎ出した。

それに合わせて由妃も勇人の隣にを走る。


「いや、なんか物騒な響きだなぁと思って。…でも挑戦状叩きつけるって、なんか古いってか、…ドラマの見過ぎだろ。」


「そんなことないっ!私本気なんだけど!!」


すっかり気分を悪くした由妃は頬を膨らまして自転車をこぐスピードを上げる。


急にスピードが上がり、勇人は「え、はや!!」と口を開く。


「ちょ、由妃?」


「――ちゃんと報告しろっていうからちゃんと言ったんでしょっ!」


ふん!と息を吐く由妃に勇人の頬は緩む。


なにか行動を起こす時には伝えてほしい、そう言ったのはついこの前のことであり、由妃も了承していた。


――由妃は由妃なりに気を使っていたのだ。


ふん、と視線をそらしてしまった彼女だがほんのり耳が赤い気がする。


それに勇人は小さく笑うと由妃を見やる。


「ごめんって、由妃。」


「なにさ!!勇人のアホっ!」


「あはは、由妃…ちゃんと言ってくれてありがとう。」


「―――!!あああ!もう!!ゆーとっ!早く行くよ!!練習始まる!!」


「え!?てか速すぎだろ!」


ぎゅいん!と猛スピードで進んでいった由妃に勇人は置いていかれてしまう。


あの由妃の行動は照れ隠し。



振り返ることなく進んでいってしまった由妃の様子に勇人は笑う。


「がんばれ、由妃。」


勇人は微笑んで由妃に追いつこうとスピードを上げた。



















「は…速すぎだ、」


ふらりとしながら自転車を止めると由妃はそれを見てわははと笑う。


「あっはっは!ゆーとはまだまだだね!!」


「…違う、絶対そういう問題じゃない気が…。やっぱり由妃って体力バカ?」


「なにかな?」


キッと視線を向けられ、勇人はびくりとする。


「――あ、いやなんでも!」


「へへ、そうだよね!さっ!行こう!」


ニコニコしてグランドに入る由妃を見て勇人はふう、と息をつくのだった。






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