そばにいてくれる君へ。

□30.思う通りに
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西浦高校野球部。


彼らは毎日のように夏休みも部活を行っている。

今日も毎日の部活であり、いつものように彼らは着替えて、グラウンド整備をしていた。


しかし彼らは手をピタリと止めてそれに釘付けになっていた。


その表情はまさに“驚き”である。


彼らの視線は入り口に集中していた。


そこをくぐって来た人物はニカっと笑う。


「はよ!」


「おはよーっ!!」


そう、由妃と勇人である。


2人が一緒にフェンスをくぐると全員が動きを固めて凝視した。


そして彼らは一瞬で集まり円を組むとボソボソと話し始める。


「ささささ栄口と仲川が一緒に来たっ!!」


「ど、どうゆうことだ!?」


「こここ怖い!!」


「誰か聞いてきてよ!」


「そうゆう水谷が行けよ。」


「ええ!?なんでオレ!?」


「な、な…。」


冷や汗を流し、チラチラと由妃達に視線を向ける部員達。


どうする、誰が、と押し付け合っていた時だ。


「さっ、栄口く、んと仲川さ、んっ、仲直り、した、の!?」


中々聞けなかった台詞を三橋がキラキラっと
目を輝かせながら聞く。


部員達はそれを聞いて「み、三橋っ!?」「ちょ、おい。」と慌てる。


しかし彼らのそんな慌てぶりを見て由妃も勇人も首を傾げつつ、三橋の質問に答えた。


「「うん。」」


その言葉に一瞬空気が止まる。


「「「ええぇぇえっ!!?」」」


部員の叫びと同時、三橋はキラキラしたまま2人に話しかける。


「よ、よかったっ!!オ、オレっ、いつも仲良しの2人がスキ、なんだっ!!」


それを聞くと由妃はへらりと笑い勇人は頭をかく。


「三橋…。」


「あははっ、ありがとー三橋くん!!!優しいねぇ三橋くんは!」


「よ、よかっ、た!!」


「うんうん、三橋くん可愛いなぁっ!」


「うへ、仲良し!!」


「うん!仲良しっ!!」


ほんわかとした空気が流れるが、数秒後、勇人と由妃、そして「良かった!」と興奮気味の三橋の周りに部員が一気に集まる。
(その勢いに三橋はビクリとした。)


「ちょ、待って!!!」


「オマエらほんっとに仲直りしたわけ!?」


「正直に、ちゃんと言えよ!!」


次々と放たれる部員達の言葉に再び2人は首を
傾げつつ、同時に頷いた。


「「うん。」」


「仲直りしたよ。」と勇人。


「みんなそろってなんなのさ。」少し怪訝そうな様子の由妃。


部員達はそれを聞いて顔を見合わせる。


「や、」


「「や?」」


「やったあああ!!!!」


「いや本当に良かったな!」


「安心したよ!」


「本当本当!!」


ワイワイと囲む彼らに由妃達はぽかんと首を傾げる。


「「?」」


「まあとにかく練習だ!栄口、着替えろよ。」


花井がそう言うと勇人は不思議そうにしながらも頷き、歩いていく。


取り残された由妃は千代が来たことに気づき笑顔で走っていく。


部員達はそんな2人を見送るとはーっ!と息をつく。


(ほんっとによかったぁあ!!)


(これで練習中に睨まれることがねぇっ!)


(いやー、仲川に睨まれるとなんでか体が固まるんだよなー!)


(しかも栄口がそれを普通にスルーするから更に怖いんだよな!)


(ともかくあいつら2人が仲直りしたら安心して普通に練習できる…!!)


(((あー良かった!)))


うんうんと頷き合う彼ら
を見て勇人は不思議そうに見る。


「…さっきからみんなどうしたの?」


「ん?ああ、なんでもないって。」


「栄口ほら練習始まんぞー!」


「?うん。」


明らかに様子のおかしい彼らだが、勇人は首を傾げながらも靴ひもを結んだ。




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