la neige poudreuse
□告白
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「あなたが好きです」
それは何の前触れもなく突然。
心の準備なんてもちろん無い。
返事だって考えちゃいない。
急に言われたら普通誰でもそうだよね。
でも、意思表示ってのは当然しなくちゃいけないわけで、思いを打ち明けないと伝わらない。
だからカップルなんかも成立してるわけだけど、私が彼に向かって言った言葉は、これ。
「や…やだなぁ、アレンってば!何の冗談?からかうなら他の人にしなよ〜。あははー」
バシバシとアレンの肩を叩いて、私は逃げるようにその場から走り去った。
自室に戻った私は、何度も何度も大きな深呼吸をした。
私の心臓は爆発寸前。
分かりきったことだけど、走ったせいだけじゃない。
「び、び、び、びびびっくりしたぁ〜」
どもってるうえに、膝が笑ってる。
数分後、落ち着いた私は重大な事に気付く。
「のぁああああー―――っっ!!」
頭を抱えて奇声を発した理由は、自分の愚かさを思い知ったからにほかならない。
実は、私はずっと前からアレンが好きだった。
任務でコンビを組むことが多くて仲良くなってからは、一緒に食事したり遊びに出掛けたりして、私の隣には誰よりもアレンがいる時間が増えて、いつしか仲間という感情は恋心に変わっていた。
思いを寄せる人からの告白。
飛び上がるほど嬉しかったけれど、私が口にした言葉は、あれだった。
私は極度の赤面症で上がり症。自分から告白なんて無理に等しいタイプ。
せっかく相手から言ってもらったのに…。
「もったいないことをした……」
おまけに、アレンがまっすぐ私を見て真剣に言ってくれたのを笑い飛ばすなんて、失礼だ。
私が深い溜め息をついて、反省ザルのようなカッコをしていたのは言うまでもない。
アレンに謝って、勇気を出して自分の思いをちゃんと伝えよう―――。
そう思った私は、アレンの姿を探した。
彼の部屋、食堂、談話室。教団内を駆け回って、アレンを見つけた場所は、裏の森だった。
彼が私を呼び出した大きな木の下に、アレンはまだ居たのだ。
「アアア、アレン!!」
緊張で上擦った声で名を呼び、彼に駆け寄った私は、木の根に蹴つまずき、見事なスライディング。
「はぎゃっ!!」
自分でもなんて間抜けな声を出したんだと思った。あまりの格好悪さに、もう消えてしまいたい。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌てたアレンの声。
地面にへばり付いて動かない私を抱き起こす。
「痛かったでしょう?怪我はありませんか?」
「き、嫌いにならないで…」
アレンの優しさが胸に染みて、涙腺が緩みかけていた。
「嫌いになんかなりませんよ。そんな泣きそうな顔しないでください。これだから、あなたからは目が離せないんです」
「アレン…」
「あなたのこと見てますよ。この先もずっと」
そう言ってアレンは、私の顔についた泥を拭ってくれた。
「私…アレンが好きだよ」
不思議なくらい自然と言えた。
伝えられた、自分の気持ち。
このあと、お互い茹で蛸のように顔を真っ赤に染めて笑いあったのは、二人だけの秘密。
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