竜の目
□第八話・意味
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「クジラが大人しくなった…」
「ーーーで?お前らは何なんだよ……!!」
クロッカスが消えてしばらくするとクジラは大人しくなった。
そして、麦わら一味はルフィと共に落ちて来た、王冠を被り頬に妙な模様を入れた男と、青い髪の整った容姿の女に質問を投げかける。
「私の目が黒いうちはラブーンには指一本触れさせんぞ!!!」
「誰だあのおっさん。」
「戻ってきた…」
クロッカスが上方の扉から船を見下ろし叫んだ。
「フフフ……」
「ホゥ…だが我々はもう鯨の腹の中。」
「「この胃袋に風穴を開けることだってできるぞ!!!」」
怪しい二人組は武器を抱えて、狙いをクジラの胃袋に合わせる。
「もう我々の捕鯨の邪魔はさせん!!!」
「!!ゴロツキが………!!!」
クロッカスは自ら打ち込まれた弾に向かって飛びついた。
ドゴォン!!!
「!!!」
「あのおっさん自分から弾を…!!!」
「まさか…このクジラを守ったの…!?」
クロッカスに弾が当たった事により、クジラの胃袋には傷は付かなかった。
「オホホホホホ!!ムダな抵抗はよしなさいっ!!」
「そんなに守りたきゃ守って見ろ!!このクジラは我々の町の食糧にするのだ!!!」
「…え…何であのおっさんが!!?」
「どうなってんのっ!!?」
「く…!!!」
二人組は再び武器を構える。
そして、
ガンッ!!
「!!?」
「何となく殴っといた。」
ルフィの拳によって失神した。
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「……このクジラはアイランドクジラ、"ウエストブルー"にのみ生息する世界一デカい種のクジラだ。名前は"ラブーン"。」
胃酸の海に浮かぶ小さな島の上でルフィ達はクロッカスの話に耳を傾ける。
「そしてこいつらは近くの町のゴロツキだ…ラブーンの肉を狙っている。そりゃあコイツを捕えれば町の二・三年分の食料にはなるからな。
だが私がそれをさせん!!」
ゴロツキ、と言われた二人組はロープで縛られ、今尚気絶中である。
「こいつが"レッドライン"にぶつかり続けるのにもリヴァース・マウンテンに向かって吠え続けるのにもわけがある。
――――ある日私がいつもの様に灯台守をしていると、気のいい海賊どもがリヴァース・マウンテンを下ってきた。そしてその船を追う様に小さなクジラが一頭。それがラブーンだ。」
クロッカスは思い出すように静かに続ける。
「船は故障して岬に数ヶ月停泊していたから、私も彼らとはずいぶん仲良くなっていた。そして出発の日―――私は船長にこう頼まれた。『こいつをここで二・三年預かっててくれないか。必ず世界を一周しここへ戻る』と。ラブーンもそれを理解し、私達は待った。この場所でずっとな。」
「だから吠え続けるの…体をぶつけて壁の向こうに…」
つまりクロッカスはラブーンを守るための何かをするために、わざわざ胃袋にいるのだろう。
「そうだ…」
「もう……五十年も前の話になる」
「!!」
「仲間の生還を信じている」