竜の目
□第二話・アーロン
3ページ/6ページ
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「逃げろなんて言われても、おれたちはここ以外目的がねェんだよな…」
アーロンのイスにどっかりと座るとゾロが呟いた。
もちろん周りにはすでに動かない魚人たちが。
「あの女連れ戻すってのがルフィとの約束だしなァ…」
「そうだね、肝心のアーロンは留守な訳だし。」
「どうしたもんかね。面倒なことになってきだぜ。」
アーロンが向かったココヤシ村の場所は知らないし、藪から棒に探しに走っても時間がかなり無駄になる。
ブッパパブパブパブッパッパーッ
二人が考え込んでいるとラッパの音が聞こえてきた。
それもどうやら近い。
ブッパパブパブパブッパッパーッ
「何だ今のラッパの音は……」
「ここ、この塀の向こうだと思う。」
二人して塀の外に顔を出すとたこのような顔の男が、串に刺した丸焼きの豚を持っていた。
「お前か…ラッパ吹いてたのは。」
「にゅ゙!!!誰だてめェは!!おれか?!おれの名ははっちゃん!!『ハチ』とそう呼んでくれ!!!」
聞いておいて結局答えを待たずして名を名乗った上、呼び名のリクエストまでしてきた。
「お前も魚人なのか。」
「モチよモチ!!艶かしいタコの魚人よ!!おめェは見たとこ人間だな!!海兵か!?客か!?」
腕をぐにゃぐにゃと動かして質問してきた。
「客?…まァ客だな。」
「しかしお前今アーロンさん居ねェだろ。」
どうやら頭が悪いというか抜けているというか、少々憎めない魚人だ。
「あァ居ねェ。どこ行ったんだ。」
「何でも鼻の長ェ他人者が逃げ回ってるらしくてよ。もう一人はここに捕まえてあるって話だが、そいつを捕まえにココヤシ村へ行ったぜ!!」
(ウソップか・・・助けに行かないと。)
「その村へはどう行けばいい?」
ハチは海に浮かぶツボを指差した。
「?」
「乗んな!!客だろ!!送ってくぜ!!!」
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「おう!!着いたぜ!!ココヤシ村だ!!アーロンさんもいるハズだ!!」
「ああ、ありがとう。」
「ありがとうございました。」
「いいってことよ!!達者でな!!また来いよ!!じゃあな!!」
バシャバシャとハチは再びアーロンパークに向かい泳いでいった。
「……おう。…変な魚人だ…」
「でも助かったよ!」
「まぁな。……この村にギサッ鼻も来てんのか…。まーいい…、ひとまずウチの長っ鼻を探すか。」
二人は村に入って村人に尋ねて回ったが、
「何?!ウソップがアーロンパークへ?!」
「ああ、さっき捕まって連れてかれる所を…」
「くそ!!すれ違った!!」
早速ハチに連れてきてもらったことは無駄になった。
「ちくしょう!戻るぞ!」
「うん!」
だだだだだだだ!
くら、
「…ッ」
名無し子の顔が一瞬歪んだ。
(そういえば今日水飲み忘れてた…!水筒入ったカバンも船だし…)
ココヤシ村は暑い。もちろんコートなんて着て過度な運動をすれば熱中症になりかねない。
現に名無し子はすでに軽い脱水症状を起こしている。
(あー…まずいかも…でもウソップが…)
「どうした。」
「っえ?!」
「体調よくねェならここにいろ。」
走りながら話す。
「別に悪く…」
「んなコート着てりゃ当たり前だ。脱げばいいだろ。」
「それは出来ない!」
慌てて名無し子が答える。
「…じゃぁ歩いて来い。おれは先行ってっから。」
「それもやだ!」
「じゃぁもうどうすんだこのバカ!」
どうにもならない名無し子にゾロがキレる。
「ったく!…おい!」
たまたま家から出てきた村人に声を掛けた。
「悪いが水貰えねェか。」
すると村人は水を一杯持って再び出てきた。
ゾロはそれを受け取ると、ぶっきらぼうに名無し子に突き出す。
「…飲め。」
「あ、ありがと…」
名無し子は礼を言って、ぐいっとそれを飲み干した。
そして村人にコップを返す。
「ありがとうございます!」
心無しか涼しくなった名無し子は満面の笑みで言った。
その直後に体がふわりと浮いた。
「わ、ゾロッ?!」
ゾロは名無し子の腰を抱えて担ぎ上げていた。
肩の上で名無し子がジタバタとする。
「動いたら落とすからな。…お前に熱中症で倒れられても面倒だ。」
そう言うと走りだす。
「…面目ないです…。」
だだだだだだ
ドッゴォォォォ!!!
「ん?………何の音だ?」
しばらく走ると、大きな音がした。
だだだだだだだだだ
「―――――しかしでけェ音だったな。爆弾でも降ってきたのかこの島に。」
「な、なんかヤな予感するんだけど。」
「……そんなことより急がねェとウソップの奴が殺されちま…!!?」
バキバキバキ
「あああああああああ!!!」
ドカァン!!!
突然林から現れた船が突っ込んできた。
「おォ!!ゾロ!!!名無し子!!!」
「アニキィ!!!旦那ァ!!!」
船の上に見覚えのある三人。
「ルフィ…!!!」
「ヨサク!サンジ!」
船が宙を舞い、
ドッゴォォォ…ン!!!
ザザザザザ
「!!!」
そして着地。
かなり乱暴な上乱雑だが、やっと麦わらの一味はこの島に集結した。