竜の目
□第十一話・忘れて
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「はァ・・・そりゃ惜しいことをしたが・・・まだおれにも活躍の場は残ってるわけだ。大丈夫!!この眠れる騎士が目覚めたからには君の安全は保障する。」
「は〜〜〜〜〜〜〜っ寝ててよかった〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
ウイスキーピークでの出来事をようやく聞いたサンジとウソップは、それぞれいつも通りの反応をする。
「ナミさんちょっとジェラシー?」
「べつに。」
「まァだが援護はおれに任せとけ!!ちまたじゃ手配書の3千万ベリーはおれの後頭部にかかってんじゃねェかって噂でもちきりだ。」
「雪ふらねーのかなー。」
ウソップが手配書にある自分の後頭部を指差している隣で、ルフィは海を眺めて呟いた。
「ふるわけねェだろ。」
「降るんだぞ。お前寝てたから知らねェんだよ。」
「?」
「なァ!!雪はまた降らねェのかなー!!」
「降らないこともないけど、一本目のあの海は特別なのよ。リヴァースマウンテンから出る7本の磁力が全てを狂わせていたから。」
嬉しそうに言うルフィにビビは説明する。
「―――――だからって気を抜かないことね。一本目の航海ほど荒れ狂うことはまれだけど、普通の海よりもはるかに困難であることには違いない。決してこの海をナメないこと、それが鉄則!!」
「おい!!野朗ども!!おれのスペシャルドリンクを飲むか!!?」
「「「おおーーーーっ!!」」」
「クエーーッ!!!」
「・・・・・・」
クルー達はビビの話を聞いていないようで、サンジの持ってきたドリンクを受け取っている。
「いいの!?こんなんで!!!」
「いいんじゃない?シケでも来たらちゃんと働くわよあいつらだって・・・・・・死にたくはないもんね。はいあんたの。」
言いながらナミはドリンクをビビに差し出す。
「・・・・・・それはそうだろうけど・・・なんか・・・気が抜けちゃうわ・・・・・・!!」
「うお!!いけるクチだなおい。うめェか!?どんどんいけよ!?」
「クエー」
「なーウソップ、釣り道具作ってくれよ。」
「釣りかー、いいなそれ。」
「よし、じゃあおれがアーティスティックなつり竿を・・・」
ビビの目線の先にはわいわいと騒ぐクルー達。とても命を狙われているという自覚を感じさせない。
「悩む気も失せるでしょ、こんな船じゃ。」
「・・・・・・」
(そうか、)
ビビの隣で名無し子もクルー達を見た。
「・・・・・・ええ、ずいぶん楽・・・」
(こんな船じゃ、悩む気も失せるんだ・・・。)
ビビはここに来てようやく安心した笑顔を見せる。
その反面、名無し子は少し顔を顰めた。自分がレイン島を"あんな風に"出たのに、それに一言も触れようとしないクルー達。いつも明るく騒ぐクルー達。
それが自分を狂わせることに畏怖の念を抱いていた。
「おいしい!」
ビビがサンジのドリンクに感嘆の声をあげて笑う。
目が合うと名無し子も笑って、そうだね、と短く返した。
「おいみんな見ろよ!イルカだぜ。」
「おお」
「わあっかわいい・・・」
ザパッ・・・
水面から水飛沫と共に飛び出したイルカはきらきらと太陽光を纏い
、とても美しい。
そして可愛らしい、
否、可愛らしい・・・はずだったが、さらに足された形容詞がそれを相殺した。
「「「「「「デカイわーーーーーっ!!!」」」」」」
そう、そのイルカは美しく可愛らしく、そしてデカかった。
「逃げろーーーーっ!!」
「ほいきたキャプテン!!」
ルフィの声にクルーは必死に船をイルカから遠ざけていった。