竜の目

□第十話・王女と
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「ふー・・・やっと・・・静かないい夜になった。」


ゾロは民家の屋根の上で酒を呷る。

「?気のせいか・・・?妙な気配が・・・・・・」

何かを感じとり、その方角を見る。




そしてその気配とは全く関係の無いものを発見した。



「ふふふんふふー♪」

「・・・あいつは・・・まだ酔ってんな。」


視線の先では名無し子が上機嫌にふらふらと歩いている。


「ふんふんふー♪」


「・・・あいつは・・・!!あの海賊の一味じゃねェか・・・!!」

「おい!酔ってるぜ!!」

「へへへ!しかも丸腰だ!!」

ボロボロの賞金稼ぎが、名無し子の前に立ちはだかった。

「あンのバカ・・・!!」

ゾロはその場に酒を置くと民家から飛び降りる。



「どちらさま?」

「・・・へへっ、お前ェの仲間の剣士に今世話になったモンだよ・・・」

にこりと笑う名無し子の前には5人程の刃物を持った男達。

「お礼をさせてくれよ!この女顔!!」



「・・・・・・女顔・・・?」

ピクリと名無し子の眉が釣り上がった。

が、ただの条件反射だったようで、再びにこにこと男達に笑いかけている。


「死んじまえ!このオカマ野朗!!!」

「ウォォォォォ!!!」



名無し子は笑ったまま手の平を前に突き出した。







「蝶々が通るよ♪お腹を通るよ♪」



ゾロは酔っているはずの名無し子からのただならぬ空気に立ち止まる。

名無し子は親指を交差させる。

そして目をキツく細めた瞬間、






「ーーー無刀流、"通蝶(ユキチョウ)"」




ドドドドド!!!



ドサドサドサ・・・!!










「・・・・・・・・・!!!!」


ゾロは名無し子の動きに目を見張る。



(――――蝶・・・!!!)


名無し子とは何時も手合わせしているが、一度も今の様な動きを見せたことはない。

何時も本気でないと感じていたのは正しかったことを確信する。





「あ、ぞろ!!」


名無し子はゾロを指差し、再び笑う。

名無し子は立っていた位置から数歩前に出た所に。背後には男達が倒れている。

それも、互いに互いの刃物を刺し合っていた。






「・・・・・・お前、」
「ふぁあぁぁ・・・」

ゾロの言葉の途中で名無し子が欠伸をする。


「・・・・・・」

「ゾロ、ちょっとだるいんだけど負ぶってくんない?」

「手前ェは酔うとわけわかんねェな!!!」


結局ゾロは酔っ払い相手に話を聞くことを諦め、そして名無し子の我が儘をきいたのだった。








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