竜の目
□第二話・アーロン
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(鷹の目、ね。
七武海はやっぱりケタ違いだ。)
海上レストランバラティエに首領・クリークが現れたことにより、麦わら海賊団は散り散りになってしまった。
ナミは宝を持って船ごと逃げてしまったし、七武海の鷹の目のミホークとの戦闘でゾロは大怪我。
そして船長命令により、海上レストランバラティエにはルフィのみを残し、船員たちはナミ捜索へと向かったのだった。
(もし、これでルフィが追ってこないようなら、おれは他を当たるようになるな…)
果たしてあの麦わらの船長はそれだけの実力があるのか。それを見定める機会が早く訪れたことに、名無し子は安心していた。
(時間が無駄になってしまうしね。)
「アーロンパーク?」
「はい、思い出してみたら結構心当たりがあるんスよ。」
「アーロンか…またやっかいだな…」
「誰だ?そいつは。」
ゾロが名無し子に問いかけた。
「魚人海賊団のやつで、クリークより強い。確かこの辺の島にアーロンパークとかいうふざけたものを作ったらしいけど…」
「そうです、この島です。」
海図を指してジョニーが言った。
「じゃぁあっしはルフィの兄貴に伝えるために引き返しやす。」
「ん、頼むよ。」
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「つ…!!つ!!着きましたっ!!」
アーロンパークを見ながらジョニーが言った。
「あそこに本当にナミがいんのかァ?!」
ウソップはガチガチと震えている。
「…。」
名無し子とゾロは大して表情を変えずにアーロンパークを見やる。
「着きましたが…問題はこれからっす。まずナミの姉貴がどこに船をつけたかを…」
「斬り込むか?」
キン、と刀の刃を晒してゾロが言った。
「ん何でそうなるんすか!!!」
「アホかてめェ!!!まだ何の手がかりもつかんでねェんだぞ!!!」
ウソップとジョニーが怒鳴った。
そしてすぐにゾロを縄で船に括りつける。
そのあとすぐに見つけたゴーイングメリー号はどうやらアーロンパークとは離れていて、アーロンパークに乗り込む、という可能性はなくなった。
途端にウソップは元気を取り戻し、いつもの調子に戻る。
が、
ゴーイングメリー号に船をつけようとして魚人と目が合う。
「ぜんそくぜんしーん」
「へーい」
すぃー、とゴーイングメリー号はその前を通り過ぎる。
「「何通り過ぎてんだよ(の)!!」」
「「しーーーーーっ!!」」
名無し子とゾロのツッコミに慌てて二人が口を噤むよう合図する。
「今見たか?!魚人がいたぞ!アーロン一味だ!見たろ?!恐ェんだよ!悪ィかよコラ!!」
ウソップが怒鳴る。
「お前がキレんな。」
「…態度が逆転したな。」
二人は呆れつつ各々想うことを口にする。
「ダメだ…この辺一帯マジでアーロンに支配されてるようっす。」
ジョニーもまた焦りながら言う。
結局は、
「どうします?ウソップのアニキ!」
「よし、ナミは連れ戻せなかったということで…」
と言う始末。
「最悪じゃんか…」
「おれの縄をほどけバカ!!」
ジタバタとゾロが暴れだす。おそらく魚人を片付ける、と言う意味で。
「…いいのか?」
名無し子がウソップに問いかけた。
「んな事言ったって魚人だぞ!魚人ッ!!」
「じゃなくてあれ。」
食ってかかるウソップの背を指差し言う。
バシャバシャ
「もう来てるよ。」
「何だあの船は!見かけねェ船だ!!」
名無し子の指の先に視線をやれば、魚人がこちらに向かっている。
「ゲ!!!脱出!!!」
「御意っ」
「ちょっと待てお前らァ!!!せめて縄をほどいていけェ!!!」
ばしゃんとウソップとジョニーが海に飛び込んだ。
(…これは、チャンスかもな。上手くすればすんなりアーロンパークに入れるかも。)
「へへへっ追いついたぜ。」
「止まれ止まれェ」
水を滴らせながら魚人が二人船に上がる。
「何だコイツら二人か…?」
「さてはどっかから島流しにでもあったな?」
「…あァまァな…」
「なるほど、こりゃ拷問で受けたケガか…」
「だがお前は無傷な上に縛られてもねェな。」
「いやぁ、溺れてたら偶然この船がね。」
ギロリとゾロが名無し子を睨む。その目は明らかに非難していた。
(なんでコイツは動かねェ…!!)
逃げず、かといって刀も抜かない。不可解な行動にしか見えなかったからだ。
「よし、とりあえずアーロンさんとこにつれてくか…!!」