□Reason to be alive.
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間抜け、滑稽。

そう言って下を向いて震える猿野に何を言えばよかった?
そんなことない、とも、大丈夫だ、とも言ってやれない。
そんなことを言ったってどうしようもない。
しばらくたっても動かない猿野に迷ったオレは、オレは。

…生きればいい。

猿野が、顔を上げた。
目を合わせて続ける。

みっともなく足掻いて。
みっともなく誤魔化して。
どんなに自分が情けないと感じても、生きればいい。
ただ生きていればいい。

求めるものがないのならオレが求めるものになってやる。
生きる目的が欲しいのならオレが生きる目的になってやる。

オレはお前が必要だ。
とりあえず…傍に居ろ。

自分勝手だ。
猿野のことなんか考えていない。
だけどこんなことしか言えない。

うん。と。

一言だけ言って、また下を向いてしまった猿野にオレは何もできなかった。
ただ抱きしめることしかできなかった。

…無力だ。
苦しんでいる猿野に何もしてやれない。

けれど、掴んでくる腕が少し震えなくなったから。
オレは何か出来たのかもしれない。
都合がいいように、そう考えておこう。
もしかしたら。
今は、今だけは。
役に立てているのだろうか。




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