「なぁ」
「んー?」
後ろから廉に包み込まれるように抱きしめられながら、私は雑誌から視線を外す。
「いや、やっぱいいや」
「何ー?」
変な廉ちゃん!と続けると廉は綺麗に整った眉を少し寄せた。
私はまた雑誌に視線を落とす。(あ、このコート廉ちゃんに似合いそう…)
パラリとページを捲ると、私の腹部に回されている意外にしっかりした腕にグッと力が加わる。(ぐぇ…)
苦しいんですけど…なんて言わずに、力が加わったコトにも気づかないフリ。
「なぁ…」
「…」
またページをパラリ。
さっきから変な廉ちゃん。
言いたいことがあるなら早く言えばいいのに。
まさか…別れ話!?
なぁんてこの腕を思えば愛されてる以外に何があるというのだろうか。
「結婚するか」
はいはい、結婚がどうしたって?
え、結婚?
「…何とか言えよ」
「おい…」
「どした?」
言って廉の綺麗な顔がさらに近くに来る。
覗き込まれるように廉に見つめられ、顔が熱くなる。(絶対紅いよ、私の顔!)
「廉ちゃんッ」
廉の方に向き直って、彼の目を見つめる。
「…何だよ」
廉の前で正座して、ねぇ。と声をかけた。
「もう一回」
「…?」
「目を見てもう一回言って下さい」
すると廉は一瞬びっくりしたような顔をしてすぐに、スッと正座をした。
コホンと一つ咳払い。
「俺と、」
「うん」
「結婚して下さい」
「うん!」
廉に抱きついて答える。
まさか、廉からプロポーズを受けられるなんて。
「卒業したら式挙げてさ」
「うん」
「大和達とかヤンクミとかみんな呼んでさ」
「うん」
「絶対ぇに幸せにするから」
「うん」
ねぇ廉ちゃん。
私幸せだよ。
廉ちゃんといれて、
ホントにホントに幸せなの。
「私を廉ちゃんのお嫁さんにして下さい」
「任せとけ」
ありったけの力で抱きしめれば、廉も同じように抱きしめ返してくれた。
みんなはびっくりするだろうか。
みんなは喜んでくれるだろうか。
卒業式の後、サプライズで用意した私達の結婚式を
みんなは心から、祝福してくれるだろうか。
「幸せになろうね、一緒に」
「おぅ」
ニッと歯を見せて笑った廉に、“ありがとう”と“これからもよろしく”の意味を込めて
ソッとキスをした。
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