X.novel
□BELOVED PERSON
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「もしも僕がいなくなったらどうする?」
「え……」
あまりに何でもないような口調だったから、問い掛けの意味が、理由が、解らなかった。
今、色々大変な今この時に、そんなことを訊かないでほしい。とも思う。
「どうする、って言われても…実際なってみないことには」
「はぁ。ウヅキ君はからかい甲斐が無い」
からかってたのかこの人。
湛えた微笑と、態とらしいファミリーネームの使い方にむっとした。
「少し位取り乱して、先輩死んじゃうんですか?とか訊いてくれればいいのに」
「癌にでもなったんですか?それとも、ベッドに頭を打ち付けたんですか?」
「手厳しいな」
先輩は相変わらず余裕と優しさの漂う顔で笑っている。
喉を伝う慣れない感触に赤くなりながら、口を尖らせた。
「変なことを訊く、先輩が…っ、いけないんです」
「ふふ、ごめん。どうしても気になってね」
どうしてそこまで?
訊ねるより早く、シーツに投げた手に指が絡む。
「ねぇシオン」
「は……い」
青い、青い、海の様な眼。
釘付けにされる気分はまるで催眠術だった。
「さっきの続きだ。…僕がいなくなったら、どう思う?」
「せん…ぱ…?」
先輩が何を考えているのかは解らない。
ただ深い瞳の奥底に見える輝きは真剣で。