Ilegenes

□需給は一致
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「ジェ……ク…?」
「あぁ、悪い。起こしたか」

薄く瞼が開いて焦点の曖昧な孔雀眼が姿を現し、がさごそと物音を立てる人影を捉えた。
覇気の無い寝惚け眼を見たジェイクはうち笑った後、何かを抱えて親友の元へ向かう。ほら、と差し出された服を受け取ったフォンは意外そうにジェイクを見上げた。

「随分早いな」
「昨日みたいに床を這わせたくなかったからな」
「座っただけで這った覚えは無いが…」
「似たようなもんだろ」

完全否定も出来ないフォンの口から苦笑が洩れる。どちらかと言えば、自嘲の方に近い。

いつもの通りの決まった時間に目覚めた。士官学校時代から変わらない、元首になっても変わらなかった定刻に。しかし喪失による変化は確実だ。
着替えの為フォンは壁を伝ってクロゼットまで辿り着こうとしたのだが、脚が一本足りると足りないとではバランスの取り方が大きく違う。人並を凌駕する運動神経も限度を超えて崩れ落ちた。

座り込んで立ち上がる気力さえ失い、漠然と思ったこと。これから面倒をかけるのか。脚だけではない。きっとこれから、様々なことで。
タイミング良く助けに来た男から気にするなと言われたが、彼の胸中は複雑だった。
 
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