進撃
□進撃のG
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ある真夏の昼下がり。
調査兵団所属、ティア・マクドールは執務室でだらしなくのびていた。
「へ〜ちょ〜〜。暑いです」
南向きに造られた窓からは夏の太陽の日差しがもろに射し込んでくる。
じりじりと焼けつく腕は尋常でない熱を帯びていた。
「間の抜けた声で呼ぶな。こっちまでアホになる」
「あ。今遠回しに私のことアホって言いましたね」
「最大限率直に言ったつもりだ」
少しでも日陰に逃げようとするティアには目もくれず手元の書類に目を通しているのは、言わずと知れた調査兵団兵士長、リヴァイ。
「ああもう、よりによってこんな暑い日にエアコンが壊れるなんて!
技巧班は明日じゃないと来られないって言うし、兵長日頃の行いが悪いんじゃないですか?」
「なんでそうなる。少なくともおまえよりは百倍ましだ」
「失礼な!私は常に真面目に働いてますよ!」
「だったら口じゃなくて手を動かせ。さっきからちっとも進んでねえだろ」
元から良いとは言えない人相に更に苛立ちを覗かせたリヴァイが睨みを利かす。
先日の壁外調査の報告書をまとめるよう指示したのだが、先程からの流れでわかるように全く捗っていない。
するとティアは怯むどころか小さな子供のようにむすっと唇を尖らせた。
「兵長の鬼!うぅぅ、暑い〜暑い〜暑いよぉ〜」
「暑い暑いうるせえんだよ、余計に暑くなるだろうが」
「えっ!?兵長でも暑いとか感じるんですか?」
「……おまえは俺を何だと思ってる?」
「だって人類最強なのに」
「関係ねえだろ」
「この真夏でもずっとスカーフしてるし、てっきり暑さも何も感じない人類最強のバカなのかと思ってました」
「よし、そこに直れ。風穴空けて涼ませてやる」
「お気持ちだけ頂戴しておきます」
ペンをカッターに持ち替えたリヴァイが席を立つと、ティアは先程までのやる気のなさはどこへやら、脱兎のごとく部屋の隅へ逃げ出す。
その機敏さを普段の仕事にも活かせばよほど有能な部下になるだろうに。
「暑ちぃ……」
無駄に体を動かしたせいで体温が上昇した。
べたべたとまとわりつく感触が気持ち悪い。
額に滲んだ汗をハンカチで拭ってリヴァイは顔をしかめる。
「ほら!兵長だって暑いって言った!
暑い暑い言ったら余計に暑くなるんですよー!っぎゃ!」
すかさずぴょんぴょんと飛び跳ねてはやし立てるティアにリヴァイは今度こそカッターをぶん投げた。
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