ナルト置き場
□始まり
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次の日。
重症者がいるはずの病室から、騒がしい声が聴こえてくる。
「だーかーらー、それが1番自然だろ?」
「どこがだ!」
「だって女装してないとバレるかもしれないし…」
「だからって、何で恋人なんだ!」
そう。実は昨日の夕方、キバの姉が見舞いに来た時の事。
「キ〜バ。ほれ差し入れ」
「あぁ、姉ちゃん。サンキュ」
キバが差し入れの籠を覗いていると、キバの姉がクスッと笑い出した。
「?…何?」
「いや、別に。…ただ、あんたもやるなぁって思ってさ」
「何が?」
「左近さん。あんたの恋人なんだって?昨日ウチに挨拶に来たよ。しばらく世話になりますって」
「……はあぁぁ??!!」
キバは思わず乗り出し、治りきっていない傷に顔をしかめた。
キバの姉は気にせず続ける。
「なんでも、この前あんたが大怪我して帰ってきた戦いの時に巻き込まれて、家と親をなくしちまったらしいじゃないの。あんた、戦うなら場所を考えなさいよ」
もうめちゃくちゃだ。
自分が適当に説明するまでもなく、勝手に話が作られていた。
まぁ、左近の正体がバレていないだけましだと思うが。
諦めと安堵のため息をつくキバ。
そんなキバにキバの姉は少し声量を落として話し始めた。
「左近さん、綺麗な人だねぇ〜。とても男には見えなかったよ」
「…へ?」
ちょっと待て。
左近は女装すると言っていなかったか?
キバは冷や汗を流す。
そんなキバの心情を察したのか、キバの姉は「違う違う」と首を横に振った。
「確かに最初は女の人だと思ったよ。けど、私は女だし年齢も近めだったからね、わかるよ。まぁ安心しな、他の人にはバレてないよ」
女の勘ってやつかなぁ〜と関心してしまうキバ。
自分はあれだけ戦っていたにも関わらず、すぐには左近だとわからなかったというのに。
「まぁ、頑張れ少年!」
そう言ってぽんとキバの肩を叩き、キバの姉は行ってしまった。
残されたキバは、ただ呆然とするしかなかった。
そして現在に至る。
「俺はどんなツラして帰ればいいんだ!」
「いいじゃん、お姉さん以外にバレてないんだし」
「だからって…」
「お姉さんも協力的だし。何か困った事があったら力になるってさ。頼もしいな」
…姉ちゃん…絶対楽しんでる…。
そう思わずにはいられないキバだった。
→後書き