Long Story
□第十九夜
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今宵空に浮かぶは昨夜より少し欠けた月。
そんな月明かりの下で一人、青年が蹲る。
「結局、的にさえ当たらなかった……。」
ルイは盛大なため息とともに大きく肩を落とした。
「気にすんなって、ルイ。マジになれば当たることあるって、きっとさ。」
ラビがルイの肩に手を置いて励ます。
「しっかしよくこんな奴が伯爵に狙われずに済んだな。」
不幸中の幸いだ、と神田が続ける。
「両親の情報を得ようとしてた時、なぜ簡単に入ってこないのか、疑問に思ったんだ、オレ。そして、やっとのことで死んだという情報を得たとき、その理由がわかったんだ。」
「家族の死を嘆き悲しみ、千年伯爵に狙われるのを防ぐため、ですよね。」
ルイの後をアレンが続ける。
「…そう、オレだって狙われたらどうなるかぐらいの知識は持ってる。アクマになるのは御免だからな。そんときは必死でこれからのことだけ考えようとしたんだ。」
とはにかむルイ。
「偉い!偉いさルイ!!」
「僕もルイみたいな少年でいれば良かったのに……。ごめんマナ!」
ラビとアレンが感心していった。しばらく二人の拍手の音が家と家の間を反響していた。