押入れ

□紅葉と神様
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「・・・!」
神様が宙に向かって手を伸ばすと
空からその人が降りてきたの
真っ黒な着物、紅葉みたいなオレンジの頭
大きな刀を背にしょって
ああ、これはきっと秋の神様の守護者
(だってこのすごい圧力、普通じゃないもの)

守護者は宙に止まったまま
とてもとても優しい目で神様を見詰めたの
でもその腕には赤い傷

「・・・、・・・・?」
神様はそれはもう悲しそうにその傷を見て呼びかける
その声のままに地面に降り立つ黒い着物

「・・・・・・」
神様が何か唱えると、髪飾りから飛び出す2つの光
それは赤い傷を柔らかい光のドームで包み込んだの


うん、あたしが神様を神様だってちゃんとわかったのはこの時なの
だって、傷がみるみるふさがっていったんだよ?
そんなこと出来るのは神様だけだよね?


それでね、それでね?
傷が治った守護者は神様にどんなお礼したと思う?
あのね、こう手を伸ばしてあの綺麗な胡桃色の髪の毛を撫でてから
そっとやさしく近づいて、ちゅってしたの!

神様はびっくりしたみたいに赤くなって、でもそれからとっても綺麗に微笑んだの
その時風がさぁっと吹いて、黄色や赤の紅葉がはらはらはらって二人を包んで
きらきらの落ち葉の中で見詰め合う二人はまるで映画のワンシーンみたいで
とってもとっても素敵だったの

あたし、あんなに綺麗で幸せそうなもの、見たことなかったよ
きっと神様とその守護者は、お互いがとっても大好きで大切なんだよね?




「そうだねぇ、きっとそうに違いないよ。でもそのことをあまり人に話しちゃいけないよ?」
「どうして?おばあちゃま??」
「・・・神様だって、大好きな人とのことは秘密にしておきたいだろうからね?」
「そっかぁ、そうだよね!じゃあこれはおばあちゃまとあたしだけの秘密ね!」

孫娘がそういい残し去ってゆくと、老婆はほぅ、と溜め息をつく

(あああの子は私に似て、見えないものを見てしまう性質
きっとまた何かこの世ならぬものを見てしまったに違いない)

それでも、と老婆は思う
時々現れるあの恐ろしい化け物を見ずに、そんな善い何かを見たのなら、幸せだったねぇ、と
(女の子にありがちな、恋への憧れもあるのかもしれないね。神様達のキスだなんて!)
微笑ましく思いながらも目を閉じた

――もしあの子があなた達を見たのなら、神様どうかお願いです
あの子が恐ろしい目に遭わない様に、護ってやって下さいませ――


    end
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