応接間

□吊り橋には二人きりで
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「わぁーい、すっごい長いねっ!!」
井上と二人でやってきたのは、長い長い吊り橋。
吊り橋ったって吊っているロープなんざ、俺の腕より太いくれぇで。橋の袂に立つと、対岸は遥か向こうの消失点状態。
ただの人集めな観光名所だろ?と思ってたんだが・・・ここまで行くと、すげぇ、かも。
「えへへへへ〜。渡るのにどのくらいかかるかな?」
まあな、俺の横で瞳をキラキラ輝かせてるこいつのこの、超楽しそうな様子見られただけで、ここに来た甲斐があるってもんだぜ?
「どうだろうな、兎に角渡ってみようぜ?」


<吊り橋には二人きりで>


「あ、でも、これだけ幅があってがっちりしてたら、あんまり怖く、ないねぇ?」
「そうか?」
渡り始めれば左右に広がる広大な空間。それに比べたらこんな幅すんげぇちっぽけ、じゃねぇか?
「うん、これならどんどん行けちゃうよー♪」
スキップせんばかりに軽い足取りでどんどん進んでく井上。
ちょ・・・本気で全然怖くねぇのか?それはそれで・・・なんつーかちょっと期待外れっつーか・・・



『”吊り橋効果”だ!いいなそれを狙え一護!』
『なっ!恋次いきなり何だよ!?』
『いいからおめぇは織姫ちゃん誘って、そのなんたら吊り橋に行けって!二人きりにしてやるからありがたく思え!!』
『はぁあ??つか何だよその”吊り橋効果”って??』
『知んねぇのか?”ぐらぐら揺れる吊り橋が怖くてドキドキしたときに異性をみると、そのドキドキを恋のドキドキと勘違いして好きになっちまう”っつー奴だよ!そいつを使えばヘタレなおめぇにだって織姫ちゃんがずっきゅんドキドキしてくれるって寸法だぜ!?』
『はぁああああ?ンだよそれ??いらねぇよンな効果!』
『ほー、つまり何か一護おめぇンなのいんねぇ程織姫ちゃんに好かれてる自信があるってことか??ああ?』
『う、うるせぇよ!だ、大体な、て、てめーがルキアと行けばいいじゃねぇかンないいところなら!』
『バーカ!ルキアがンな高いとか揺れるとかを怖がるような可愛い性格してりゃあ、俺だって苦労しねぇんだよ!』
『ああー・・・』
確かにルキアがそんな場所を怖がるとは到底思えねぇ。でもよ・・・
『・・・井上だってンなの怖がるとは限んねぇぞ?』
『いいんだよ!したらおめぇが’揺れると危ねぇから俺から離れるなよ?’とでも言って肩のひとつも抱いちまえば!』
『肩ぁ!?ばっおまっなんつーこと!』
『おめーがそうヘタレだからいけねぇんだろが!!兎に角だ!なんでもいいからてきとーに理由つけて二手に分かれねぇことには俺達ずぅーーーと!このまんまなんだぞ?一護おめぇそれでいいのかよ!?』
・・・
俺達の前には、ぴっとりとくっついて二人で何やら会話してはきゃっきゃと笑いあう、井上とルキア。
『つーか!元々俺はてめーらと一緒に出掛けるつもりなんてなかったっての!!』

そうだ元はと言えば、俺が井上を誘ったんだぞ、『どっかに出掛けよう』って。
俺にしちゃあ上出来な積極的誘い、それは成功したかに見えたのに。
・・・一体いつどんな拍子でルキアと恋次まで付いて来ることになっちまったんだよ!?
ヤ、丁度現世にやってきたルキアに優しい井上が声、かけちまっただけ、なんだけどよ・・・
ああ井上。お前ほんとーーーーに分かってんのか?俺が、俺がどんだけ勇気出して一緒に出掛けよう、なんて言い出したのか??

『元がどうだか知んねぇが、今は目の前のあの不毛な状況をなんとかすんのが先だろが!俺はルキアの好きそうな甘味処チェックしてきたから、そっちにルキアを誘うからな!』
『それ、たい焼きが美味いって店じゃねぇのか・・・?』
『何でもいいから、お前は織姫ちゃんをがっつり捕まえておくんだ一護!頼むから’あ、あたしも食べたいな〜’’おお井上!やはり気が合うな、では一緒に行こう!’っつー展開だけは勘弁してくれぇ!!』
『’がっつり’ってなんだよ!』
それにしても恋次の奴、必死すぎやしねぇか?
ああそうか、あの恐ろしい保護者の目のない現世でひとつどうにかしてぇ、って思ってやがんだな?
まあよ・・・俺だってそりゃ、井上と二人きりで・・・ちったあこの、なんだ、こ、恋人らしいことしてぇってのはあるんだけどよ・・・
『・・・ま、まあ・・・前向きに検討してやっても、いいぜ?』
『何だよっその政治家答弁みてぇな返事は!ええっ一護ぉー!!』
情けねぇぜ恋次・・・副隊長ともあろうもんが、恋の前ではその体たらくとはよ・・・


そんでまあ。
どうにかこうにか、井上をルキアから引き剥がして、吊り橋に連れて来ることに成功した訳だが。
(つか、恋次のすんげぇ必死ぶりを、井上と言えども感じ取ったんじゃねぇかと・・・)

・・・こう、平和に安全に渡れる吊り橋のどこに”吊り橋効果”があるってんだよ?ええっ恋次ぃ??

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