応接間

□落ち葉拾い
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高校の校舎の裏には沢山の桜の木。
春には「秘密のお花見ポイントなんだよ!」とやたらここに来たがってたのは知ってるが。

・・・さっきから何を挙動不審にうろうろしてんだ?あいつは??


<落ち葉拾い>


桜の木の葉はすっかり色づいて、はらはらと落ち。
この時期の掃除当番ははっきりいって面倒。掃き集めても掃き集めてもキリねぇから。
そんな裏庭の掃除当番だって井上が言うから「テキトーに切りあげろよ?」と言ってはおいたが。
案の定、いつまで経っても戻って来やしねぇ。
一緒に帰る約束を待ちわびて見に来てみれば、あの様子。

手にした箒を用具置き場に置きに行こうと歩いたかと思えば。
いきなりくるりと振り返って、掃き集めた落ち葉の山をじっとみて。
かと思えばはらはらとまた落ちた枯葉に気がついて、それを箒で掃いて落ち葉の山を更に高くする。

あーあー、だからよ、キリがねぇって言っといただろ?さっきから何回ソレ繰り返してるんだよ?

井上によって少し嵩を増した落ち葉の山は、もうあいつの腿の辺りまで盛り上がり。
すんげえ量だよな、後でまとめて始末するからって何日分も溜め込まれて。
そんな山のてっぺんをそおっと押してみている井上の手。

何だ?今度は何してんだ?

「えへへ・・・す、すごいっすね〜?」

なっ何だよっ何そんなに目ェ輝かしてるんだよ??

と思えば何故か箒を地面に置いて、きょろきょろと周りを見渡す井上。
思わず見つかんねぇ様に隠れる、校舎の陰から伺っている俺(言っとくが覗きじゃねぇぞ!?なんつーか出るタイミング逸しちまっただけだ!)。

「や、やっぱりここでやらないと気が済まない、というか女が廃るってもんっすよね!よーし!!」
なんだなんだ何握りこぶし突き上げてるんだ??
妙に力入った顔でてけてけと落ち葉の山から遠ざかると、くるりっとまた山に向き直り。
「1番、井上織姫!いっきまーす!!」
高らかに宣言して走り出した!
「うおぃ??なっ何を???」
思わず漏れた俺の声と、彼女の華麗な(?)ジャンプとはほぼ同時。

ずっしゃーん、ぶわーん、ぱらぱらぱらぱら・・・・
「井上ーー!?」
慌てて駆け寄った俺の目には、落ち葉の山の真ん中に埋まった井上のヘンな格好。
「はーーー、楽しかった!やっぱ最高っすね”落ち葉山ダイブ”は!!」
「ってぇ!おっお前一体何やってんだよ!??」
「は、はひゃあ??くっくくく黒崎くん??」
井上は俺の顔を見てびっくり仰天真っ赤になって、急いで落ち葉の山から抜け出そうとじたばた。
「こっこれはねっなっ何でもないのっわっ忘れてぇ〜!!」
「いいから!慌てんなっての!ってお前ぇ!!」
助けようと手を出した俺の顔も一気に真っ赤。だっだってよ・・・
「ひゃーだめぇ!ぱんつ見ちゃだめぇええ!!」
「ばっばかっンなことでけぇ声で言うんじゃねぇーーー!!」


ま、まあよ。
すったもんだしながらも、あわあわ暴れる井上をどうにかこうにか落ち葉の中から助け上げた訳だが・・・
正直、騒ぎを聞きつけて誰か来なくてよかったっていうか・・・
だってよ、こんな何があったんだよ?な乱れた格好の井上と一緒にいるとこ見つかったら・・・お、俺のイメージってもんが、だなぁ・・・大体そうでなくてもあることねぇこと噂されてるみてぇなのによ・・・?
よかった、誰も来ねぇで本当によかったぜ、うん。

「ふぇーん、落ち葉でちくちくするよぅー」
「ったり前だっつーの!」
俺の気持ちも知らずにスカートだのカーディガンだのにくっついた落ち葉を一生懸命取っている井上を見かねて、一緒に取ってやりはじめる。
「・・・ったく・・・なんだってンな格好でこんなことしてやがったんだよ?」
「だ、だって・・・」
また真っ赤になって俯く彼女の頭では一体どんな奇妙な思考回路が働いているのか、俺にはいつになってもわかんねぇ。
「そうだよっ冒険!やっぱり人生には冒険が必要なんっすよ!!そしていつか猛獣に襲われて木の上に追い詰められたとき手近な落ち葉山の上に飛び降りて逃れる訓練で・・・」
「ねぇから!ンなことぜってーねぇから!!」
「えー・・・絶対ってことはないと思うっす・・・」
往生際悪い彼女にはぁ、と溜め息つきながら、馬鹿野郎ンなことになる前に絶対俺が助けるぜ!と思っても・・・言えねぇもんはしょうがねぇだろ?
兎に角今はその背中の落ち葉も取ってやんねぇとな?と後ろを向くように促した。

「ふひゃああ?!」
後ろを向こうと動いた井上はまた妙な悲鳴を上げた。
「!ばっ!声でけぇって言ってるだろ??」
「あっごっごめんなさい!」
「で?どうしたんだ一体?」
「・・・あ・・・なっなんでも・・・」
またまた顔を赤くしてもじもじする井上。
「隠すんじゃねぇよ。何でもねぇならなんであんな声出すってんだよ?」
「う、うん・・・あの、あのね・・・お、落ち葉が中まで入っちゃってたみたいで・・・」
「中?カーディガンの中にか?ンじゃ脱いで取るか?」
「う、ううん!?う、上じゃなくてね・・・」
井上が恥ずかしそうに弄ったのは、スカートの裾。
「ど、どうしよう、やっぱり脱がないと取れないかなぁ?」
「あっああああああアホかぁあああああー!!ぬっ脱ぐな!ンなとこで脱ぐんじゃねぇえええええーーー!!!」


あああああああああああ。
くそぉなんでここは学校なんだよっ違った何でこうこいつはあけすけっつーかバカ正直っつーか・・・?
健全な青少年である俺はもうどうしたらいいのか分からないんですが神様。
大体さっき見えちまったあの純白が頭から離れないっつーか、畜生俺でさえちらっとしか見たことねぇトコロに枯葉の分際で・・・!と落ち葉に嫉妬する末期な俺なんですが。

黒崎一護、高校生。
カワイイ彼女の行動言動にすっかり一喜一憂、悶々とする日々だなんて・・・他の奴らには絶対知られたくねぇぜ!と思う秋。

とりあえず、とりあえずまずは。
今日こいつを家まで送り届けたら言ってみようか。
「落ち葉ちゃんと全部取れたか、確認してやるぜ?」
・・・・・・・すまねぇやっぱムリだし・・・・・・嗚呼・・・・・・

    end
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